オーストラリア・シェパートンの家庭医療視察の報告
2016年11月23日テーマ:筑波総合診療グループ
オーストラリア・メルボルン大学との交流として、2016年10月3日~8日に行ったシェパートンの家庭医療視察についてご報告します。
今回の視察の概要については、以前ご紹介しました、2016年10月11日のブログを御覧ください。
オーストラリアでは、General Practitioner(以下、GP)という「かかりつけ医制度」が定着しており、プライマリ・ケアにおけるGPの役割が大きく、GPによる医学教育が普及しています。
今回訪れたシェパートンは、農業が盛んなオーストラリアの田舎町でした。中核となる病院は1箇所であり、その向かいにメルボルン大学の教育診療所のひとつである「Shepparton Medical Centre(以下、SMC)」と医学生が授業を受ける施設や宿舎がありました。
SMCでは、GPの診療の見学を通して、GPが様々な背景を持つ患者に対して包括的にケアを行い、臓器別の専門家と連携しながら継続して診療を行っていることを学びました。GPが「かかりつけ医」となる仕組みは、臓器別専門医が少なく、医療資源の限られる田舎において重要な役割を果たしていると感じました。
街の中心に位置する「Lister House Medical Centre」では、GPの専門医資格である、The Royal Australian College of General Practitioners(RACGP)を昨年取得されたDr. Chickの診療を見学させてもらい、診療の合間にはオーストラリアのレジデント制度についてお話を伺うことができました。
また、今回の視察をコーディネートして下さったDr. Helen Malcolm(GPであり、メルボルン大学医学部のカリキュラムを作成されている先生)のご厚意で、医学部3年生の地域医療実習の振り返りやロールプレイによる臨床推論の学習の見学をさせてもらいました。豊富な臨床実習に加えて、GPが「地域で必要とされる医療」や「診療所でよく出会う症候の鑑別」について医学生に教える環境があることが、地域の診療所でGPが活躍する環境を作っているのではないかと感じました。
10月7、8日の2日間は、The Shepparton Agricultural Showという農業の祭りでのメルボルン大学の医学生によるボランティア活動に参加しました。血圧測定による健康チェックやTeddy Bears’ Hospitalという幼い子どもたちに医療に親しんでもらう活動が行われ、医学生にとって地域住民とコミュニケーションを取る学びの場になっていました。
今回、GPによるプライマリ・ケアの診療、医学教育を見学することを通して、オーストラリアと日本の家庭医の役割、教育手法の違いを知ることができ、とても貴重な経験となりました。
(レジデント 久野 遥加)