ちいここ合宿 in かみす2024 ~その1:地域診断の学びと気づき~
2025年3月30日テーマ:総合診療塾, 筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 神栖, 未来医療GP, 地域包括ケア, 医学教育
地域診断の学びと気づき
かみす合宿の1-2ヶ月前、私たちは「地域診断」をテーマにしたオンライン事前学習に取り組みました。
このワークショップの目的は、神栖市を実際に訪問する前に統計資料などを活用し、まちの姿をどれだけ想像できるかを体験することでした。
学習を進める中で、神栖市の人口動態や経済指標などの統計データを分析した結果、「神栖市は豊かな街で、人口も多く、特に問題がないのではないか」という意見が学生から出てきました。しかし、この認識は統計データだけに基づいた一面的な理解でした。
より深い洞察を得るため、勉強会には地元の方々にも参加していただき、神栖市の歴史や市民の視点から見た地域の実情について貴重なお話を伺いました。阪本医師と地元の方々がファシリテーターとなり、学生たちとの議論を促進してくださったことで、私たちの理解はより立体的なものへと深まっていきました。
このプロセスを通して最も重要な学びとなったのは、立場によって解釈や地域の捉え方に大きな違いが生じることでした。私たち外部の人間と地元の方々が、それぞれの視点から見える風景を共有し意見交換することで、統計データだけでは決して見えてこない地域の実情や課題が浮き彫りになりました。この経験から、地域を理解するためには数値だけでなく、現地での対話や直接的な観察が不可欠であることを改めて実感しました。
地域診断とは・・・
対象となる地域について客観的指標と多角的な観察を通して、その地域特有の問題や特徴を把握するプロセスです。「鳥の目」で全体を俯瞰し、「虫の目」で細部を観察し、「魚の目」で時間的な流れを捉えるという多層的なアプローチにより、地域の健康課題を理解するための基盤を築きます。
筑波大学では、医学部(医学群医学類)の実習で、この地域診断を泊まり込み型地域医療実習に取り入れたプログラムを長年実施しています。
特に「ちいここ合宿」では、医療系学生たちが継続的に神栖市に関わることで、地元の方々との信頼関係を構築し、共同作業を通じて、より実践的な取り組みへと深めています。
活動の中核となるのは、医療系学生による幅広い視点でのフィールドワークです。彼らはまちなかでインタビューを実施したり、様々な職業の方々に帯同したり、地域の日常的な作業を実際に体験したりします。これらの活動を通じて、地元の方々の何気ない言葉や思いを丁寧に拾い集めていくのです。
このような活動を通じて、文化人類学的な視点からコミュニティの特性を観察することで、人々の生活習慣や文化、健康観などが健康課題とどのように関わっているかを深く理解しようと試みます。最終的には、健康の社会的決定要因を探るための洞察を得ることを目指しています。
このような実践的な学びのプロセスを通じて、将来の医療従事者たちは純粋な医学的知識だけでなく、地域社会という広い文脈の中で健康を総合的に捉える視点を養うことができます。これは、地域に根ざした医療を提供する上で不可欠な能力となるのです。
<ちいここ合宿 in かみす2024>の全体のスケジュールはこちら
さらに詳しく知りたい方は、
筑波大学 神栖 地域医療実習 特設サイト ~かみすでの、地域医療実習~
(地域診断の資料がダウンロードできます)
https://www.pcmed-tsukuba.jp/area/kamisu/case/community/diagnosis.php
編集担当:山本司(医学生6年)/監修:阪本直人(総診スタッフ)
【参加者募集】第1回総合診療塾(5月20日 総合診療/家庭医療とは 2025)
2025年3月29日テーマ:総合診療塾, 筑波総合診療グループ, 医学教育
【第1回総合診療塾のお知らせ】
当科では毎月全国の医学生を対象にzoomで総合診療に関する基礎知識のレクチャーを行っています。
今回のテーマ は「総合診療/家庭医療とは 2025」です。
今回は現地参加もあります!
皆さんは総合診療/家庭医療と聞いてどのようなイメージを持ちますか?
医療の急速な進歩は、私たちに大きな恩恵をもたらしましたが、一方で医療の専門細分化が進みました。
その結果、健康上の困りごとに対して
「何科にかかっていいのかわからない」
「○○科だと思って受診したら、専門外といわれて診てもらえなかった」
「複数の体の不調をまとめて相談したいのに、その医師の専門領域しか話を聞いてもらえない」
といったケースも数多くみられるようになりました。
また、生活習慣病が増え、病気になる前からの予防・健康増進の重要性がクローズアップされていますが、「病気にならないと診てもらえない」という状況も生じています。
このような状況において、健康問題をトータルでとらえ、なんでも幅広く対応する総合診療医の存在は、地域医療の担い手として、社会的にも大きな注目を集めています。
また地域医療だけでなく病院の中で活躍する病院総合医としての役割もあります。
今回は、総合診療塾の初回導入スペシャルとして、いわゆる「患者さんをまるごと診る専門医」である総合診療について、たっぷりその内容をお伝えする回です。
少しでも総合診療/家庭医療に興味がある方はぜひご参加ください!
会場参加 or 「無料オンライン」開催 もあります!場所にとらわれず、全国どこからでも参加可能です。
主な対象者: 全国の医学生(低学年~高学年)
日 時: 令和 7年 5月 20日(火) 19:00 ~ 20 : 00
講 師:筑波大学地域医療教育学/筑波大学附属病院副病院長 前野哲博 先生
【オンライン参加の方】30分前になりましたらイベントページよりZoomに入室が可能となります
【会場参加の方】筑波大学地域医療システム研究棟1F シミュレーションラボ事務室
申し込みはこちらから。
たくさんの方のご参加をお待ちしております!
【ちいここ合宿 in かみす2024】参加者レポート・シリーズ開始のお知らせ
2025年3月29日テーマ:総合診療塾, 筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 神栖, 未来医療GP, 地域包括ケア
はじめに
全国学生団体「ちいここ」×つくば総診かみすチームによるコラボ企画が、今回で3回目を迎え、下記の日程で開催されました!
この企画は、医療系学生が地元の企業や産業で働く人々に帯同しながら、くらしへの理解を深め、コミュニティの魅力と関わり方を模索するという特色ある合宿です。神栖市を舞台に、参加学生たちが地元の方々との継続的な関わりや対話を通して、学びを深めてゆく貴重な機会となっています。
【2024年のスケジュール】
今回の合宿には6名もの参加者が神栖市に集まり、これまでにない賑やかな雰囲気となりました。参加者は地元茨城県出身の学生をはじめ、東京からの参加にも関わらず、今回で3回目のリピーターとなる学生、さらには青森県から遠路遙々「ココキャン」のメンバーも加わるなど、出身地も学年も参加のきっかけも様々な顔ぶれが揃いました。このように多様なバックグラウンドを持つ学生たちが和気あいあいとした雰囲気の中で交流し、充実した時間を過ごしました。
本シリーズでは、この多彩なメンバーによる「ちいここ」合宿 in かみす2024の経験を臨場感たっぷりにお届けします。
どうぞよろしくお願いいたします。
ちいこことは・・・
『ちいここ〜地域と医療のすべてがここにある〜』は、地域医療に関心のある100名以上の医療系学生が日本全国から集うオンラインコミュニティです。地域医療の最前線の現場を生で体感することができる合宿企画「ちいここ合宿」や不定期でコミュニティメンバーが学んだことやそれぞれの活動について共有をしたり、交流できる場をオンラインで設けています。
【公式ホームページ】
https://chiicoco.com/about/
ココキャンとは・・・
NPO法人ココキャンは弘前市を拠点に地域課題解決、学生の医療参加促進、ボランティア活動を行う医学生主体の団体である。
主な活動内容は、医学生と話せるカフェ「医Café SUP?」、高校生への進路支援を行う「進路塾」、総合診療医と学生、地域の交流を目的にした学習会「総診×医カフェ」、市内の子どもたちに遊び場を作り学習支援する「ココラボ」などである。
現在では青森県や弘前市から委託を受け、医学生への教育事業などを手がけている。
【公式ホームページ】
https://sup-icafe.com/
編集担当:山本司(医学生6年)/監修:阪本直人(総診スタッフ)
【参加者募集】第10回総合診療塾(3月17日 臨床推論の基本的な考え方 -全身倦怠感-)
2025年2月21日テーマ:総合診療塾, 筑波総合診療グループ
【第10回総合診療塾のお知らせ】
当科では毎月全国の医学生を対象にzoomで総合診療に関する基礎知識のレクチャーを行っています。
今回のテーマ は「臨床推論の基本的な考え方 -全身倦怠感-」です。
「体がだるい」と言っても、貧血や不眠などをはじめ、原因はさまざまあげられます。
症状を訴える患者さんに対して、効果的に病歴を集め、過不足なく鑑別診断を挙げて、診断を絞り込んで次のアクションにつなげていく。
この一連の臨床推論のプロセスについて、具体的なアプローチのしかたを学びます。
「無料オンライン」開催!場所にとらわれず、全国どこからでも参加可能です。
主な対象者: 全国の医学生(低学年~高学年)
日 時: 令和 7年 3月 17日(月) 18:00 ~ 19 : 30
講 師: 筑波大学附属病院 総合診療科 前野 哲博 先生
申し込みはこちらから。
たくさんの方のご参加をお待ちしております!
「高齢者施設の服薬簡素化提言」に、当大学院メンバーらによる論文が引用されています
2024年5月24日テーマ:総合診療塾, 学術活動(学会発表・論文・書籍), 筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP, 地域包括ケア
2024年5月17日、一般社団法人日本老年薬学会から「高齢者施設の服薬簡素化提言」が発表されました。詳細はこちらからご覧いただけます。
この提言には、つくば総診の大学院(筑波大学大学院地域医療教育学分野)メンバーらによる論文が引用されています。現場では既に実施されていることも多いかと思いますが、この提言は患者さんや現場の負担を軽減するための大きな一歩です。総合診療医の皆様も多くの施設を訪問されているかと思います。抜粋してご紹介いたしましたので、参考にしていただければ幸いです。
提言1: 服薬回数を減らすことによる多くのメリット
服薬回数を減らすことで、以下のような多くのメリットが期待できます:
- ・誤薬リスクの低下
- ・医療安全の向上
- ・入所者/入居者の服薬負担軽減
- ・服薬アドヒアランスの向上
- ・施設職員の与薬負担軽減
- ・勤務の平準化
提言2: 服薬は昼1回にまとめることを積極的に検討する
施設職員の多い昼に服薬を集約することで、さらなるメリットが期待できます。ただし、以下の点に注意が必要です:
- ・昼服用に適さない薬剤がある
- ・療養場所の変更時には見直しが必要
この提言が、国民と医療者の安全とQOL(生活の質)向上の一助となれば幸いです。
【引用された論文】
● Shoichi Masumoto 1 2, Mikiya Sato 3 4, Kenji Momo 5, Aya Matsushita 6, Kosuke Suzuki 5, Hiroshi Shimamura 5, Tadanori Sasaki 5, Jun Hamano 7.
Development of medication regimen complexity index: Japanese version and application in elderly patients. Int J Clin Pharm. 2021 Aug;43(4):858-863. doi: 10.1007/s11096-020-01185-z. Epub 2020 Nov 2. PMID: 33136252.
1 Department of Family Medicine, General Practice and Community Health, Faculty of Medicine, University of Tsukuba.
2 Department of General Medicine, Tsukuba Central Hospital, Ushiku, Japan.
3 Health Services Research and Development Center, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan.
4 Health Services Center, Human Resources Group, Sumitomo Heavy Industries, Ltd., Tokyo, Japan.
5 Department of Pharmacy, Showa University Hospital, Tokyo, Japan.
6 Welcia Yakkyoku Co. Ltd., Tokyo, Japan.
7 Division of Clinical Medicine, Faculty of Medicine, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan.
● Shoichi Masumoto 1 2, Mikiya Sato 3 4, Tomotsugu Yamakawa 5, Shuhei Hamada 6, Takashi Inaba 1, Yoshihiro Kataoka 1, Sachiko Ozone 1, Shoji Yokoya 1, Jun Hamano 7.
Evaluation of changes in prescription among Japanese elderly patients before and after transition to home care. J Gen Fam Med. 2021 Nov 8;23(2):94-100. doi: 10.1002/jgf2.506. PMID: 35261856; PMCID: PMC8888811.
1 Department of Family Medicine, General Practice and Community Health, Faculty of Medicine University of Tsukuba Tsukuba Japan.
2 Department of General Medicine Tsukuba Central Hospital Ushiku Japan.
3 Department of Health Services Research, Faculty of Medicine University of Tsukuba Tsukuba Japan.
4 Health Services Center, Human Resources Group Sumitomo Heavy Industries, Ltd Tokyo Japan.
5 Graduate School of Comprehensive Human Sciences University of Tsukuba Tsukuba Japan.
6 Yamato Clinic Sakuragawa Japan.
7 Division of Clinical Medicine, Faculty of Medicine University of Tsukuba Tsukuba Japan.
令和6年度総合診療塾 日程
2024年3月24日テーマ:総合診療塾, 筑波総合診療グループ
令和6年度の総合診療塾の日程が決まりました。
来年度は今年度よりさらにパワーアップする予定です。詳細が決まり次第掲載しますので、どうぞお楽しみに!
<令和6年度スケジュール一覧>
第 1回 4月24日(水) 総合診療/家庭医療とは
第 2回 5月14日(火) 身体診察概論
第 3回 6月14日(金) 臨床推論の基本的な考え方(風邪編)
第 4回 7月23日(火) バイタルサイン
第 5回 9月 3日(火) 緩和トーク
第 6回 11月11日(月) 臨床推論の基本的な考え方(めまい編)
第 7回 12月10日(火) プライマリケアでみる糖尿病
第 8回 1月 17日(金) 臨床推論の基本的な考え方(しびれ編)
第 9回 2月 18日(火) 感染症診療の基本+誤嚥性肺炎
第10回 3月 17日(月) 臨床推論の基本的な考え方(全身倦怠感編)