論文執筆報告:破傷風ケースシリーズ
2016年11月21日テーマ:筑波総合診療グループ, 水戸
水戸協同病院の破傷風3例と邦文誌の6例を使ってケースシリーズを書きました。
Tetanus in the Elderly: The Management of Intensive Care and Prolonged Hospitalization
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/55/22/55_55.7131/_article
きっかけは、集中治療室で、破傷風の高齢者の気管挿管した症例を続けて診療したことです。
私は筑波グループでは稀有な、集中治療をサブスペシャリティーとして研修し、集中治療専門医を取得しました。それでも重症の破傷風を診療したのはこれが初めてでした。
一体どれくらいの治療期間を要するのかと、UpToDateを調べても、記載はDuration of illness — Tetanus toxin-induced effects are long lasting because recovery requires the growth of new axonal nerve terminals. The usual duration of clinical tetanus is four to six weeks.とだけでした。なぜかというと、米国では予防接種が正しく行われており、発症者が極めて少ないからです。
Pubmed検索で、米国で同じように2例の破傷風高齢者に時間とお金がかかったという報告J Am Geriatr Soc 59: 552-553, 2011.と、日本の成人は予防接種ができていない事実を知り、このメッセージで出そうと決めました。目を通していた内科学会誌で、破傷風の日本語のケース1例もみつかったThe Japanese Society of Internal Medicine 104: 1464-1468ことから、さらに医中誌やgoogleで日本語論文検索を進め、計3+6例の人工呼吸器管理の症例で執筆しました。
他にも発表すべくストックした症例は数知れず。水戸協同病院は興味深い症例に溢れており、それを診断・治療しきる資源が揃っています。
執筆にあたり「論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ」を熟読しました。初心者の症例報告や学会発表に重宝する1冊です。伝えたいメッセージは何か、新規性は何かを意識してネタを探すことが重要だと学びました。
水戸協同病院 総合診療科 五十野博基