筑波大学附属病院総合診療科 ブログ

文部科学省事業の中間評価で最高評価をいただきました

2016年7月3日テーマ:筑波総合診療グループ, 未来医療GP

2013-2017年度の文部科学省補助事業として募集された「未来医療研究人材養成拠点形成事業」(通称 未来医療GP)に、筑波大学の取り組みである「次世代の地域医療を担うリーダーの養成」が採択され、4年目に入っております。
このたび、前半3年間(2013-2015年度)の評価が文部科学省によってなされ、結果が公開されました。

「未来医療研究人材養成拠点形成事業」全体で、のべ25大学が採択されておりますが、採択校で筑波大学は唯一、最上位のS評価をいただくことができました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/1373288.htm

この評価は、本事業にご協力・参加いただいた多くの皆さまのおかげであり、またこれまで筑波大学の総合診療医の教育システムを作り上げてきた先人たちの成果でもあります。
この評価に甘んじることなく、我が国の地域医療の未来を支える質の高い総合診療医を数多く世に送り出せるよう、日々精進を重ねてまいりたいと思います。

今後とも何卒ご指導のほどをよろしくお願い申し上げます。

(事業コーディネーター 吉本尚)

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総合診療7月号(特集:感染症ケアバンドル・チェックリスト)が出版されました

2016年6月28日テーマ:筑波総合診療グループ, 水戸

雑誌『総合診療』 7月号で「感染症ケアバンドル・チェックリスト」が特集されています。

160627_感染症ケアバンドル

上記引用元:http://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=89425

私はICU領域の”人工呼吸器関連肺炎VAPの予防”を執筆しました。
VAPの定義も曖昧、予防の決定打も曖昧の中、少ない字数に何を記述するかに苦心しました。

家庭医は、病気になる前から地域を診ていると言われます。
病院総合医も、病気にならないように予防に尽力しています。
感染症のケアバンドルはその一つ。

他にはワクチン接種、二次予防投薬の徹底(心不全、COPDなど)、ポリファーマシーの削減、癌スクリーニング、介護導入・視力聴力介入もあるでしょうか。

退院した患者さんの再入院を防ぐ意味でも役立つと思います。
ぜひ手に取って読んでみてください。

水戸協同病院 総合診療科 五十野博基

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大西先生の家庭医療レクチャー

2016年6月27日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学

レクチャーの様子

レクチャーの様子

先週1週間、アメリカのオレゴン健康科学大学の家庭医療科から、大西恵理子先生が筑波大学に来てくださり、6月20日(月)に毎回恒例の家庭医療レクチャーが行われました。

今回のテーマは、家庭医療の理念を表すACCCCの一つ、Coordination of  Careについてでした。日本語だと協調的ケアと訳されます。
他の専門医や他職種との連携についてや慢性疾患管理についてなど、色々な話を聞きました。

慢性疾患管理の例として、定期受診の患者さんが、これまで肺炎球菌ワクチンを打っていなかったり、糖尿病があるのに何か月かHbA1cをチェックしていなかったりすると、電子カルテにアラートのようなものが出る仕組みがあるということでした。

便利な仕組みだな!と感じるとともに、自分の診療を振り返る機会にもなりました。当たり前ですが、慢性疾患の患者さんのマネジメントは家庭医の大切な仕事の一つですね。
大西先生は話が面白くパワフルで、あっという間に時間が過ぎました。今までレクチャーに来たことがない人も、次の機会に是非来てみて下さい。

スタッフ 山本由布

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ホームページ 一部リニューアル

2016年6月26日テーマ:筑波総合診療グループ

すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、当グループのホームページで、
後期研修の紹介ページの顔写真が新しくなりました!

https://soshin.pcmed-tsukuba.jp/training/specialsite/

ぜひご覧ください。

スタッフ 片岡 義裕

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学会発表報告 その3

2016年6月19日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学

160620_佐藤さん発表

学会発表の様子

大学院生(修士2年)の佐藤です。

611日、12日の2日間で、東京・浅草にて第7回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が開催され、そこで学会発表(口演)を行いましたのでご報告いたします。

私は薬剤師なのですが、会場にいらっしゃる方々の多くが医師という環境もあり、薬剤師の活動についてどんな反応があるのかとても心配で、非常に緊張して臨みました。

演題は、「ドラッグストアにおける症状を訴える来局者への薬剤師の対応や意識についての実態調査」です。ドラッグストアの薬剤師が、OTC薬を買い求めに来局する人に対して適切な対応をするために、臨床推論をどの程度実践して、自己評価をどう行っているかについて調査したものです。

初めての発表で緊張していましたので、用意した文章を聞き取りやすいように話そうということに注意を払って発表を行いました。会場の方や座長の先生方からは、どんなことを実際行っているのかとご質問をいただき、具体例を少し挙げながら説明させていただいたところ、とても関心を持っていただきました。

今回、発表に至るまで研究室の先生方、大学院の諸先輩方にはとても多くのアドバイスやご指導をいただきました。大変感謝しております。

また、世の中をよくしよう、まれな症例を共有しよう、地域での取り組みを紹介しようという多くの研究者の方の発表を聞くことができて、今後の活動に向けてとても多くの学びがありました。また機会をいただけたら、積極的に発表していきたいと思います。

大学院生 佐藤 卓也

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「医師のためのノンテク仕事術」が出版されました

2016年6月18日テーマ:筑波総合診療グループ, 水戸

手塩にかけた人材養成プログラムTEAMSが書籍化されました。
その他にも現場で働きやすくなるノンテクニカルスキルが詰まった一冊です。

ノンテク_カバー1-2(引用元:以下ホームページ)
https://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758117920/

TEAMSが始動したのは、2012年、私が水戸協同チーフレジデントの頃でした。業務改善に興味を持ち、日本産業訓練協会の研修プログラムTWI(仕事の教え方、改善の仕方、人への接し方) http://www.sankun.jp/seminar/?ca=3 を受講しました。
その有用性を肌で感じ、訓練指導者資格を取得し、前野先生ら大学のメンバーと共に医療版人材養成プログラムTEAMSの開発に取り組みました。2014年から筑波大学でその講習会を定期開催し、2015年には全国向けにも講習会を開催しました。

私個人では、TEAMSの効果を量的に証明するため、大学院で臨床研究を今年度まで実施しています。この手法を身につけたことで、問題の抽出から解決まで、自分の対応に一本芯が通り、迅速かつ的確になりました。

筑波大学総合診療グループ/水戸協同病院総合診療科 五十野博基

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【動画で紹介】総合診療医の専門性や守備範囲、活躍の様子について

2016年6月15日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 筑波メディカルセンター病院, 水戸, 未来医療GP

日本プライマリ・ケア連合学会 制作ビデオが、2016年6月11日に公開されました。
いま日本の医療で期待される専門医のひとつ「総合診療医」を解説、紹介する映像です。
総合診療医の専門性や守備範囲、活躍の様子をご覧ください。

日本専門医機構HP「総合診療専門医概要」より、抜粋・編集

国民に質の高い医療を提供するために、わが国のすべての専門医制度が大幅に変更され、
新しい専門医制度が2015年度医師国家試験合格者から適応されることになりました。
2017年度から日本専門医機構が認定する専門研修プログラムが開始されます。

新制度では「従来の基本診療領域に総合診療専門医を新たに加えることとする」という大きな制度改革がありました。
この総合診療専門医は様々な学会や組織の経験と知を統合しながら、新しい総合診療専門医像を
ある意味オールジャパンで創生していくことを目指し、
本機構内に新たに「総合診療専門医に関する委員会」を立ち上げ、十分かつ慎重に審議して参りました。

そして、総合診療専門医を「主に地域を支える診療所や病院において、他の領域別専門医、一般の医師、
歯科医師、医療や健康に関わるその他の職種などと連携し、
地域の医療、介護、保健など様々な分野でリーダーシップを発揮しつつ、
多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供する医師」と定義し、
この総合診療専門医に求められるコアコンピテンシー(核となる能力)として、
①人間中心の医療・ケア、
②包括的統合アプローチ、
③連携重視のマネジメント、
④地域志向アプローチ、
⑤公益に資する職業規範、
⑥診療の場の多様性、
の6つを提示致しました。
この度ホームページに「総合診療専門医」に関するタブを追加し、
「総合診療専門医」に関する資料(総合診療専門研修プログラム整備基準、
総合診療専門医専門研修カリキュラム(案)、研修手帳(案)、
研修指導医マニュアル(案)など)を掲載する事になりました。

 

 

つくば総合診療グループ 指導医 阪本直人

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学会発表報告 その2

2016年6月14日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座

大学院生(修士2年)の松下です。

6月11日、12日の2日間、東京の浅草にて日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が開催されました。そこで、人生初の学会発表(口演)を行ってきました。

普段あまり緊張することの無い私ですが、今回ばかりはとても緊張しました。
私の発表内容は多職種連携をテーマにしたもので、薬剤師が診察前に病歴聴取を行うことで、医師の診察時間を短縮できるか?というものです。

発表中は緊張していて、自分で何を話したかよく覚えていませんが、発表終了後に、聞いてくださった他の大学の先生から、「発表内容も斬新で、研究デザインもしっかりしていて素晴らしいですね!」と、この上ないお褒めの言葉を頂くことが出来ました。

このような発表ができるようになるまで、ゼロから私を指導して下さった先生方や大学院生の皆様に本当に感謝しています。

また、学会ではたくさんの医療機関での取り組みを見ることが出来て、多くの刺激をもらってきました。もっと感受性豊かに研究を進めていきたい、と心から思える経験でした。

大学院生 松下 綾

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学会発表報告 その1

2016年6月13日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション

チーフ1年の大澤さやかです。

2016年6月11日から12日に浅草で開催されました、第7回日本プライマリケア連合学会学術大会で発表をさせていただきましたので、報告します。

「Burdens of elderly care of the elderly at home by caregivers aged 65 or over」という題名で口演発表しました。大和クリニック研修中に行った老老介護負担度のアンケート調査結果を発表してきました。

International sessionということで、英語での口演発表でしたので、いつも以上に緊張しましたが、会場からの質問への返答も含め無事に終えることができてホッとしています。

英語でのプレゼンテーションの良い勉強の機会となりました。

発表内容についてご指導いただきました先生方、本当にありがとうございました!
今後の学会発表にこの経験を生かしていきたいと思います!

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業務改善の講習を受けました(パート2)

2016年6月12日テーマ:筑波総合診療グループ, 未来医療GP

講習の様子

講習の様子

チーフ1年の久野先生が受けたTEAMS-BPの講習と同じものをシニア1年の坂倉先生も受けられ、感想を送ってくださいましたのでご紹介します。

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6月4日(土)にTEMS-BP 「業務改善に関わるノンテクニカルスキル研修」に参加させていただきました。一般企業で使用されている業務改善ツールを筑波大学附属病院バージョンに改訂したプログラムです。みなさんにおすすめしたい、明日の業務から生かせる内容でした。

WSでは、4人一組の小グループで、自分の普段の仕事で改善したいと思っている作業を取り上げて、決められたステップに沿って、改善策を探っていきます。

作業を分解し、パーツごとに「いつ、なんのために、どこで、だれが、どんな方法で」とひとつひとつ自問し、それぞれのパーツを取り去ったり組み替えたり新たな方法にしたり、という過程をファシリテーターにアドバイスしてもらいつつ進めます。

レクチャーで例として扱われていたのは、看護師さんが点滴をつなぐ作業でした。物品の置き場所や、スタッフに声をかけあうタイミング、ラベルの貼り方、作業の順番などちょっとずつ改善するだけで、作業時間や歩行距離が大きく短縮される、というものでした。再現動画をみて、目からうろこでした。

効率的かつ質を高くすることで、本当に時間をかけたい患者さんの問診・診察の時間を確保できたり、ワークライフバランスを保つ生活につながったりするという色々なメリットがあると改めて感じました。

今回は事務職や医療職など含め、学外からもいろいろな職種の方が参加していて、どんな仕事や作業にも汎用性のある内容だと実感できました。

日々の業務では、まだまだ自分の未熟さに直面する毎日ではありますが、質と効率をあげる技能は、「練習すれば向上する」、という今回のレクチャーのメッセージに背中を押された思いでした。

運営スタッフのみなさん、ありがとうございました。
ほかのノンテクニカルスキル研修も楽しみにしています。

シニア1年 坂倉明恵

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【日常の風景シリーズ】大学院リサーチセミナー

2016年6月7日テーマ:地域医療教育学講座, 大学

リサーチセミナーの様子

リサーチセミナーの様子

毎週金曜日の14:30~17:00に、地域医療システム研究棟にて、大学院 地域医療教育学分野のリサーチセミナーが行われています。

セミナーでは修士および博士の大学院生が持ち回りで研究の進捗報告を行い、それに対して指導教員の先生方からのコメントを頂き、また大学院生同士のディスカッションも行います。

当教室の大学院生は医師だけでなく、理学療法士や薬剤師、柔道整復師などさまざまなバックグラウンドを持っており、研究テーマも多岐にわたっています。様々な研究について、大学院生同士で意見交換できる機会は、とても貴重な学びの場になっています。

4月には、新入生3名(博士課程2名、修士課程1名)を迎えて、また、新たな視点からのコメントをもらうことができ、ますます、活発なディスカッションになっているように思います。

博士課程4年 河村 由吏可

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業務改善の講習を受けました

2016年6月6日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション

後期研修医3年目の久野です。
私は今、桜川市にある大和クリニックという診療所で在宅研修を行っています。多職種で業務に取り組む中、業務の改善をどうやって行っていけばいいか学びたいと思い、今回TEAMS-BP※を受講しました。

今回の講習で一番印象に残ったことは、業務の中でのムダに「気付く」ことがいかに重要かということでした。普段何気なく行っている診療業務を客観的な指標を用いて、細かく分けていくと「何でいつもこうやっていたんだろう?これってもしかして、もっと良い方法があるのかもしれない」と思わぬ発見がいくつもありました。

特にTEAMS-BPの第3段階で、業務の各行程を「取り去る」「結合する」「組み替える」という指標で見直し、整理していくことは、誰にでも分かる明確な改善方法だなと感じました。
今後は、日々の研修の中で今回の受講で学んだことを1つでも取り入れ、効率的で質の高い在宅ケアを行えるよう多職種で協力していきたいと思います。

チーフ1年 久野遥加

※:TEAMS-BP(Training for Effective and Efficient Action in Medical Service – Better Process)とは、企業における業務改善のために開発されたTWI(Training Within Industry)を医療業界に取り入れるため、筑波大学附属病院 総合診療グループが中心となり開発したプログラムの一つです。

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筑波メディカルセンター病院 多職種カンファレンス

2016年6月5日テーマ:筑波総合診療グループ, 筑波メディカルセンター病院

カンファレンスの様子

カンファレンスの様子

筑波メディカルセンター病院総合診療科では,毎週月曜日の午後に多職種カンファレンスが開かれています。
担当医が,受け持っている入院患者さんのプレゼンを行い,患者さんの退院に向けて,病棟看護師,理学療法士,言語聴覚士,医療ソーシャルワーカーといった多職種の皆さんと協議します。

退院に向けて何が必要なのか,皆で考え共有するための大事なカンファレンスです。すぐに具体的な行動に移せるように、週のはじめに開催されているのがポイントです。
飲食自由で雰囲気もよく,毎回活発な議論が行われており,勉強になることが多いです。
ときには病院の枠を超えた連携が必要なときもあり,総合診療科らしさを感じることのできるイベントの一つだと思います。

医学的な知識・技術だけでなく,こうしたカンファレンスを通して他職種とのコミュニケーション能力も向上させていきたいです。

シニア1年  竹内優都

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レジデントノート増刊号「内科の視点で診る 手術前後の入院患者管理」

2016年6月2日テーマ:筑波総合診療グループ, 水戸, 未来医療GP

レジデントノート増刊号「内科の視点で診る 手術前後の入院患者管理」を共同で編集・執筆しました。

スクリーンショット 2016-06-02 09.25.18

 

https://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758115704/index.html

水戸協同病院総合診療科でいつも行っている手術前後の患者管理を、エビデンスと経験を織り交ぜてエキスパートに執筆していただきました。編集作業として全ての原稿に眼を通し、短期間で自身の知識の整理もさせてもらいました。

以下、内容を簡単に紹介します。

手術を受ける患者も高齢化し、複数の内科的基礎疾患を抱えている。病院の総合医は、外来受診を契機に悪性腫瘍など手術適応の疾患を見つけ、病期を診断し、外科へ手術依頼する。外科からの術前コンサルトを受ける。そして、予定された手術までに体を最適化して、手術しやすい状態に置き、合併症を予防する。心臓など追加検査が必要かもしれない。検査のやりすぎも手術の遅延を招くので害である。薬剤は一定期間休薬が必要なものがあれば、増量するものもある。ときには手術の延期や、手術をしないという選択肢も考えなければならない。

また、予想外に起きた術後合併症に対して、発生した段階からコンサルタントとして介入する。主科に対して、迅速に具体的で簡潔なアドバイスをし、ときには全身管理を引き継ぐ。

管理は、普段どおりの病歴聴取、診察で開始し、これまでの検査データ・治療歴・生活についても包括的レビューを行い、患者の全てを把握する。そして、周術期のエビデンスに照らし合わせて、ICUのようにシステムごとの管理方法を漏れなく計画する。

これが1冊に凝縮されています。
自信をもってオススメできる1冊です。

(筑波大学総合診療グループ/水戸協同病院総合診療科 五十野博基)

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「船中泊を伴う自然教室」の帯同医を経験しました

2016年6月1日テーマ:筑波総合診療グループ, 水戸, 未来医療GP

5月16から20日まで、中学生の船中泊を伴う自然教室に帯同医として行ってきました。


これは水戸市全校の2年生が毎年いくつかのグループに分かれて行っている行事で、私は4校合同、約300名の旅に1人で同行しました。

船中泊の名の通り、大洗—苫小牧間を18時間かけて、商船三井フェリー「さんふらわあ」で移動します。北海道では水戸市立常澄中学校のグループに同行し、日高、旭川、札幌を旅しました。
道内では病院もあるため、私の主な仕事は往復の船中での生徒の症状対応でした。解熱剤、酔い止め、抗生剤、ブドウ糖、ステロイド、エピネフリン、ジアゼパム、プロカテロールなどの薬剤や針とシリンジなどの物品をカバンに詰めて、始めての長距離フェリーに乗り込みました。

幸い波は穏やかで、生徒さんは元気で、大きな事象はなく船旅を終えました。船中では医師について職業講話も行いました。

病院のみで働いてきた総合内科医が、限られた物品をもとに一人で診療を行うことに緊張感を覚えるとともに、普段マンパワーや設備の揃った総合病院の中で働くありがたさを感じました。このような地域貢献を経験できたことも有意義でした。

(筑波大学総合診療グループ/水戸協同病院総合診療科 五十野博基)

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ワークショップ実施報告(The 1st International General Medicine Festival)

2016年5月31日テーマ:筑波総合診療グループ, 水戸

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5月28-29日にThe 1st International General Medicine Festival (IGMF)が開催されました。

イベントのホームページはこちら

2日目にワークショップを担当された、水戸協同病院総合診療科の五十野先生より感想をいただきましたので、ご紹介します。

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著名な指導医陣が15分毎のレクチャーや、30-40分以内のハンズオンセミナー、ワークショップを怒濤のごとく繋いでいく、まさに祭りの二日間でした。
そんな祭りで我々は、内科身体診察シミュレーションを行う機会に恵まれ、32名を対象に「検眼鏡ワークショップ」を行いました。

短い時間の中で全員が眼底を見られるようになるか不安がありましたが、スムーズな運営や十分な準備のおかげで、全員がパンオプティックで眼底を観察することができたようです。
水戸協同病院のメンバー(小林・熊谷・児玉・梶)と、徳田先生、ウェルチアレンジャパン株式会社4名の協力があって、それぞれのアイデアも取り入れた指導がなされたことで、成功させることができました。

我々以外のワークショップでも、キャリア成功やタイムマネジメントに関するものなど、心に響く話が聞けました。これまでのワークショップやプレゼンテーションの経験、また他施設での研修で得たつながりがあったからこそ、今回のワークショップ開催につながったと感じています。

これからもどんどんワークショップに参加して経験を積み、自分たちでも開催していきたいと思います。

筑波大学総合診療グループ/水戸協同病院総合診療科 五十野博基

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初期研修医 植松先生が総合診療科ローテーションを修了しました

2016年5月23日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学

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研修修了証を受け取る植松先生(左)と前野教授(右)

2016年4月~5月前半を総合診療科で過ごした初期研修医 植松洋先生から、ローテーションを終了した感想をいただきました。
非常に真摯に研修に取り組む姿が印象的で、短い期間の間にどんどん成長される姿に、将来への期待が膨らみました。
植松先生からコメントをいただきましたので、ご紹介します。

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私にとって人生初の研修が、今年4月から総合診療科にてスタートしました。
他大出身の研修医である私にとって慣れないこともたくさんありましたが、そんなことを忘れてしまうくらいスタッフの方々に温かく接していただきました。
また、外来診療にはじまり、総合診療や地域医療にまつわる医療政策に関することまで、幅広い、熱心なご指導をしていただきました。私の総合診療科での研修は一か月半でしたが、不安と期待が入り混じり自身の未熟さへの気づきと新たな発見が連続するとても濃厚なものとなりました。
医師としての第一歩目を総合診療科で過ごせたこと、そこで学んだ多くのことは私の、医師としての人生にとって、かけがえのない財産になったと感じております。

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(スタッフ 片岡 義裕)

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1周年記念展示始めました(北茨城家庭医療センター)

2016年5月30日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション

北茨城1周年_160530

2016年6月1日で北茨城市民病院附属家庭医療センターが開院1周年を迎えるにあたり、記念の展示をしようと皆でアイデアを出しあって、患者さんやご家族にもメッセージを寄せていただきました。
まだ募集開始から4日ほどですが、温かい応援のメッセージや健康への願いがこんなに集まりました。

「スタッフが親切」という言葉が多く見られたり、外来患者さんに「在宅医療頑張ってください」と応援していただいたりして、本当にありがたい気持ちです。
お子さんからも「元気にしてくれてありがとう」なんて言葉をもらえて皆で感激しています。

医師の似顔絵や周りのデザインは全て事務さん達が考えて作ってくれました。明日は第二弾の飾りつけをします。2ヶ月くらいは展示している予定ですのでご興味ある方はぜひ見に来てください。

北茨城市民病院附属家庭医療センター  宮澤 麻子

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【日常の風景シリーズ】利根町国保診療所

2016年5月29日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 利根町

地域医療教育ステーションのひとつである利根町国保診療所には、赤ちゃんから100歳まで、幅広い方々が受診します。
受診理由も様々で、ある日の午前外来の患者さんは、以下のような感じでした(一部抜粋)。

「いつもの便秘の薬をください」

「健診でコレステロールが高いと言われた」

「認知症で通院中、数日前に処方した定期薬がもうなくなった」

「保育園の健診で湿疹を指摘され、受診を勧められた」

「睡眠薬をどうしても毎日飲まないと眠れない」

外来の診療内容はどちらかといえば地味なのですが、改めて見返すと、バラエティに富んでいることに気がつきます。
私がこちらで診療するようになってもうすぐ7年ですが、その間に顔なじみになった人たちも増えてきました。
上記の受診理由の幅広さの上に、診療の「継続性」が加わると、何とも言えない面白さ、やりがいが出てくることを感じます。

小さいお子さんに使う絆創膏やシール

診療所で使っている絆創膏やシール

小さなお子さんの予防接種も毎週行っています。

絆創膏に、診療所職員で持ち寄ったシールを貼付けたり、診察室をキャラクターの折り紙、おもちゃや、イラストで飾ったりといった工夫も看護師さんがしてくれています。

 

子どもたちの心を癒すキャラクターたち

子どもたちの心を癒すキャラクターたち

診察台周りの様子

診察台周りの様子

 

 

 

 

 

 

 

この診察室は普段の外来でも使用しています。

成人の患者さんにとってはやや可愛すぎる感もありますが、患者さんの中には「あらかわいいねえ」「うちの孫もこのキャラクターが好きでね」など、喜んでくれる方もいます。

診療所の外に出ると、訪問診療、乳児健診、行政・施設との関わりなど、さらに色々面白いところもあるのですが・・それはまた別の機会にご紹介させていただきます。

(スタッフ 小曽根早知子)

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【出版記念インタビュー】日本の高価値医療 High Value Care in Japan

2016年5月27日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP

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日本の高価値医療 High Value Care in Japan (ジェネラリスト教育コンソーシアム) 徳田安春 (著, 編集) amazon.co.jpへジャンプします。

 株)尾島医学教育研究所より、2016年5月11日 出版

 

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著者:阪本、インタビュワー:片岡

 

今回は、日本の高価値医療 High Value Care in Japan  (ジェネラリスト教育コンソーシアム)  徳田安春 (著, 編集)の出版を記念して、
片岡より、同僚の阪本直人氏に話を聞いてみました。

どうぞお付き合いください。

 

【この書籍について】

 

片岡:

まず、この本について紹介してください。

阪本:

 はい。

ジェネラリスト教育コンソーシアムが、世に提言してきたシリーズ本の9巻目になります。

今回は、日本であまり行われていない「高価値医療 High Value Care」を、より積極的に医療現場に取り入れていきましょう。

それと同時に、日本でよく行われている「低価値医療 Low Value Care」を皆で、廃止していきませんかと、提言している内容となっています。

 

 

片岡:

世界的に、「医療の質を国民を交えて見直そう」という動きがあるのですか?

阪本:

米国の国民医療費の総額のうち約3分の1は「Low Value Care」であると米国の医療経済学者によって指摘されております。
そこで、
米国に続き、カナダや英国、スイスなどでも、低価値なケアをリストアップして、医師と患者の双方に対して、その適応を「再考」するように促す活動が始まっています。

すべての国の医療に、Low Value Careはあると言われております。

 

 

片岡:

日本も例外ではないと。

阪本:

そうです。

そこで、徳田安春先生、藤沼康樹先生ら率いるジェネラリスト教育コンソーシアムが中心となり、

日本であまり行われていない「High Value Care」と、日本でよく行われている「Low Value Care」サービスを取り上げ、

そのLow Valueリストのなかで「避けるべき・止めるべき」ケアの優先順位を決定しようと動き出しました。

 

 

片岡:

本書の構成は、どのようになっているのですか?

阪本:

前述の「High Value Care」、「Low Value Care」に関して、テーマごとに分担執筆した記事が中心で、

先日、全国から第一線で活躍する医師が集まり、Low Value Care をテーマにディスカッションを行ったのですが、その内容をまとめ、提言した内容も記載されています。

さらに、巻頭特集では、国内外のChoosing Wiselyに関する動向について、海外視察レポートも交えて掲載されており、かなり読み応えのある本になっていると思います。

 

 

【阪本担当章、『ヘルスリテラシー向上のための患者教育』について】

 

片岡:

阪本氏が担当した章、『ヘルスリテラシー向上のための患者教育』について教えてください。

阪本:

これは、主に医師を対象にしたヘルスリテラシーに関する、いわば総説です。

ヘルスリテラシーに関するエビデンスや『ヘルスリテラシーが十分でない』患者さんへのサポート手段の実際を、症例を交え紹介しています。

 

 

片岡:

ちなみに、ヘルスリテラシーとは、具体的には、どういうことをいうのですか?

阪本:

そうでした。ヘルスリテラシーの説明が先でしたね。

ヘルスリテラシーとは、

健康情報を獲得し、理解し、評価し、活用するための知識のことで、さらに、意欲や能力も含めます。

これにより、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて、判断したり、意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの1,2)と定義されています。

分かりやすくいうと、中山和弘 先生は、「健康を決める力」と提唱されています。

 

 

片岡:

かなり幅広いですね。
知識だけでなく、情報の判断や実際の生活に活かす能力も含めているところが、ポイントなんですね。
なお、ヘルスリテラシー(Health Literacy)が低いと、どのような問題を引き起こすのでしょうか?

阪本:

ヘルスリテラシーが低い集団では、受診や入院回数が増えるなどによる医療リソースの消耗や健康アウトカムの悪さなど、【表1】に示すような悪影響を幅広く生じさせることが分かってきています。

さらに、経済的には、全米で年間11~25兆円相当のダメージを与え、将来は160~360兆円と予測する報告3)もあります。

 

【表1】

Low HLがもたらす影響2e

 

片岡:

かなり広範なダメージを与えうるものなのですね。

国内外で、ヘルスリテラシーに関して、どのような議論が展開されているのですか?

阪本:

世界では、現在、アメリカ、ヨーロッパを中心に、ヘルスリテラシーに関連する研究が盛んに進められています。

日本では、石川ひろの先生、中山和弘先生らが、素晴らしい研究や知見を活発に発表されています。
当講座も一般住民を対象にしたヘルスリテラシー研究を行っております。

アメリカでは、米国健康政策の指針である Healthy People 2010にヘルスリテラシーが盛り込まれ、国をあげた健康づくりの指針に採用され、引き続き、Healthy People 2020にも採用されています。

 

このことからも分かるように、ヘルスリテラシーは、市民の誰もが持つべきライフスキルの1つでもあり、健康に関する知識や判断力を持つことは、健康維持やリスク回避にも必要ですし、医療を受ける際にも、患者家族が、意思決定にも参加できるようになることで、より納得のいく選択が得られるようになります。

 

さらに、健康や病気の「原因の原因」ともいえる、人々のライフスタイル、効果的なヘルスサービスの活用、健康を左右する環境といった、健康の社会的決定要因もコントロールできる能力としてのヘルスリテラシーが、重要視されるようになっています。

そのため、国民のヘルスリテラシーを向上させることは、アメリカの国家戦略の1つとして、位置づけられています。

 

 

片岡:

そのような背景もあって、「High Value Care」の章にヘルスリテラシーが取り上げられたのですね。

ただ、これまで、日本の医学雑誌や書籍では、ヘルスリテラシーを扱った記事は、見たことがないように思いますが・・・。

阪本:

そうなんです。

医師向けの書籍として、取り上げられたのは、今回が初めてだと思います。

この書籍の制作段階で、徳田先生より、「High Value Care」 を実践してゆく際にも必要不可欠となるヘルスリテラシーについて、大変光栄なことに、私へ執筆依頼があり、担当させていただきました。

 

 

片岡:

これだけ重要な概念にも関わらず、日本であまりヘルスリテラシーに関する概念が、まだ広まっていないのは、なぜでしょうか?

阪本:

ヘルスリテラシーに関する日本語で書かれた書籍は、現在のところ、極めて限られているのも、その原因の1つかと思います。

 

 

片岡:

ヘルスリテラシーは、全ての医療従事者が理解しておく概念ですよね。

阪本:

ええ。

それどころか、健康全般に関わることですので、医療現場で働く人だけでなく、企業の社員や一般の方にも広く知っていただきたいと思っています。

 

そこで、別の書籍の話になるのですが、医療従事者、及び医療系学生、さらに、一般の方にもお読みいただける、日本で初めてのヘルスリテラシーの教科書作りにも参加させていただきました。(こちらの記事をご参照下さい)

 

 

片岡:

皆でヘルスリテラシーを理解し、互いに助けあって、安心して健康的な生活が送れるようになったり、病気ともうまく付き合ってゆけるようになったりするといいですね。

 

【読者へのメッセージ】

 

片岡:

最後に、ヘルスリテラシーに関して、読者へのメッセージなどありましたらお願いします。

 

阪本:

このヘルスリテラシーという概念そのものは、医療従事者の誰もが、なんとなく持っている概念に近いものですので、理解しやすいと思います。

そもそも、ヘルスリテラシーという言葉を1997年にジャカルタ宣言でWHOが採択し、Don Nutbeam氏が普及させようとした背景には、ヘルスケア・プロフェッショナルの間で、そして、市民との対話を推進させるために、互いに概念を共有しやすくするための用語として、この”ヘルスリテラシー”を用いたのです。

 

このヘルスリテラシーの章を読まれた医師の皆さんには、まずは、医師の中でヘルスリテラシーという概念を広めていただきたい。

そして、医師だけでなく、多くの医療従事者とも、このヘルスリテラシー概念を広く共有していただければと思っております。

もちろん患者さん、そして、市民の皆さんとも。

 

医療の現場では、この章を読んでいただき、セルフケアの指導や、慢性疾患に関するセルフケアを支援する際などに、「この患者さんのヘルスリテラシーは、・・・」という発想を多職種で共有し、支援へとつなげてゆくためのきっかけとして活用していただければと思います。

 

 

片岡:

分かりました。私も同僚に共有してみたいと思います。

今日は、ありがとうございました。

阪本:

ありがとうございました。

 

 

  1. Sorensen et al.  Consortium Health Literacy Project European. Health literacy and public health: A systematic review and integration of definitions and models. BMC Public Health 2012, 12:80
  2. 中山和弘.基調講演 ヘルスリテラシー=健康を決める力とつながり. KENKO KAIHATSU 2013;18(1).18-49
  3. Vernon, J. A., Trujillo, A., Rosenbaum, S., & DeBuono, B. (2007). Low health literacy: Implications for national health policy. Washington, DC: Department of Health Policy, School of Public Health and Health Services, The George Washington University

 

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