秋期セミナー 病院総合医チーム2018
2018年10月2日テーマ:筑波総合診療グループ
稲葉@笠間市立病院です。
先日大阪で行われた日本プライマリ・ケア連合学会 第16回 秋季生涯教育セミナーに参加してきました。
その中で、日本プライマリ・ケア連合学会の若手医師部門 病院総合医チームのメンバーとして「あなたの勉強方法は?生涯学習をupdateしよう!」というセッションを開催しました。
内容は
① 臨床をUpdateし続ける方法(明石医療センター 官澤先生)
② 学習し続けるためのモチベーション理論(筑波大学 稲葉、 今村総合病院 崎山先生)
③ 勉強会も生涯学習の1つ(福島県立医科大学 會田先生)
の3セクションについて皆で学びました。
私は今村総合病院の崎山先生と共に、モチベーション理論を担当しました。
生涯学習においては学ぶ方法も大事ですが、学び続けるモチベーションは更に重要です。自分がモチベートされるのはどんな時か、モチベーションが下がるのはどんな時かをワークを通じて考え、世の中に数多あるモチベーション理論の中で自分に合ったものを学びながら、自分なりのモチベーション論を探るという内容でセッションを行いました。全国から集まった参加者の皆様の満足度も高く、何より自分自身の勉強にもなりました。モチベーション理論を学んでいくと、他者をモチベートしたり、組織をモチベートしたりといった内容にも踏み込むことになり、共同学習やリーダーシップなどの内容にも繋がってきます。モチベーション理論を学ぶことは、医師として必要なノンテクニカルスキルの一つであると実感しました。
レジデントやスタッフのノンテクニカルスキル向上に力を入れている筑波総診のグループ内でも今後機会を見つけてモチベーション理論のセッションを行って、グループ内のモチベーション向上やスキルアップにも繋げていければと思います。
文責:稲葉 崇
寄付講座教員として先生方が着任されました
2018年10月1日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
本日、10月1日に大学の地域総合診療医学講座の教員として、横谷省治先生(教授)、後藤亮平先生(助教)、山本由布先生(助教)が着任されました。また地域医療教育学講座の教員として、阪本直人先生(講師)が着任されました。
今月から田中伸哉先生、伊藤有理先生も新たなレジデントとして加わり、クリニカルクラークシップで5年生も総合診療科での実習がスタートしています。
2018年度下半期、気持ちも新たにみんなで頑張りたいと思います。
片岡 義裕
家庭医療学夏期セミナー セッション「あなたならどうする? ~家族が食べられなくなったとき~」
2018年8月19日テーマ:筑波総合診療グループ
今年も全国各地から、医学生・研修医、コメディカルの方達まで、貴重な夏休みを利用してたくさんの方が「第30回 学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー@湯河原」に参加しました。
私は意思決定支援をテーマにした「あなたならどうする? ~家族が食べられなくなったとき~」というセッションを担当しました。
内容は、提示した症例についてグループごとにディスカッションをし、各選択肢(経口摂取継続・胃瘻・経静脈栄養)を選んだ場合のイメージを掴んでもらうためのブース毎のミニレクチャーを通じて、再度皆で症例について考え意思決定の疑似体験をしていただくというものでした。
「どのように生きていくのか」「本人の意思が明確にわからない場合、家族がどう本人の今後を決定していくのか、医療者側はそれをどうサポートしていくのか」。高齢化社会の現代では、家族側としても、医療者側としても今後何度も直面するテーマです。
参加者さんに実際に難しい選択を迫られる患者家族の側に立って感じてもらい、医療の現場で使っているツールや意思決定支援の流れを簡単に紹介し、今後医療者側として働くようになった際にも生かしてもらえればという企画です。
このセッションがあったのは8月4日から3日間あるセミナーのうちの最終日の朝。
疲れがピークに達するであろうにも関わらず、医学生1-6年生から初期研修医、看護学生など計14名の方が参加してくれました。3日目ということもあり、各グループとも皆さんすぐに打ち解け和気あいあいとスタートしました。
提示した症例は、認知症である自分のおじいちゃん(もしくはおばあちゃん)が誤嚥性肺炎を起こしたというもの。医師からは患者は嚥下機能が低下していて、今後経口摂取をすれば誤嚥性肺炎を起こす可能性が高いと言われます。選択肢としては胃瘻、経鼻胃管、点滴、経口摂取継続の4つ。初めのディスカッションでは参加者の皆さんの多くが「食べるのが大好きだった」という設定の本人の意思を尊重し、経口摂取を選ぶ方が多かったのが印象的でした。
ブース毎のミニレクチャーでは胃瘻に使うチューブやCV、経口訓練に使うとろみ剤の実物を用意し、皆さん興味津々で質問も積極的にされていました。
最後のディスカッションも議論はつきませんでしたが、最後まで経口摂取はさせてあげたい、そのために胃瘻などの選択肢をサブとして選ぶ意見が多く出ました。
また、参加者さんの中には実際におじいちゃんが症例と似た境遇に置かれている方もいらっしゃり、身近な問題なのだと皆が実感できるいい機会になったのではないかと思います。
今回セッションに参加してくれた皆さんが将来医療者側として同じようなケースに遭遇した際に、今回感じたことと実際の臨床現場でのギャップも実感しながら試行錯誤し、患者家族と共にベストな道を探っていくための足がかりとなれば幸いです。
参加者さんの今後が非常に楽しみになるセッションとなりました!今後の夏期セミナーも、参加者さんと共に身になるセッションを作っていければと思います!
後期研修医1年目 佐藤瑠美
寄付講座 地域総合診療医学講座 吉本尚先生准教授就任祝賀会のご報告
2018年8月17日テーマ:筑波総合診療グループ
去る7月20日(金)に、吉本尚先生の地域総合診療医学講座准教授就任祝賀会を開催することができました。
当日は多くの皆様にお集まりいただき、本当に和やかで明るい会を開催することができました。遠方よりお越しいただきました皆様、また祝電やお祝いなどをお送りいただきました皆様、発起人はじめスタッフ一同、そのお気持ちが大変嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
吉本先生をはじめ、地域総合診療医学講座のますますの発展を祈念しております。
発起人:木下賢輔、小曽根早知子
家庭医療学夏期セミナー セッション「医療にまつわるおカネの話」
2018年8月15日テーマ:筑波総合診療グループ
(「やっぱり学校では教えてくれない!?医療にまつわるおカネの話」セッション担当講師一同)
(寸劇の様子)
(グループディスカッションの様子)
毎年恒例の「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー@湯河原」に講師として参加して来ました。
今回は記念すべき第30回で「原点」がテーマだったようです。
今年も筑波大学総合診療科からはいくつか講座を用意していましたが、自分は「やっぱり学校では教えてくれない!?医療にまつわるおカネの話」というセッションを担当しました。こちらは11月に行われる総合診療 ★ 家庭医療全国公開セミナーin Tsukubaでも出していた講座で、改変を重ねて3回目になります。
内容としては、医療費の概論レクチャーやクイズで楽しく学びながら、後半は入院費のDPC制度についてレクチャーを行い、実際に症例を計算するワークを行いました。一見生徒側はもちろん講師側にもややチャレンジングに思える内容ですが、我々には成功のカギを握る強力な助っ人がいます。ベテラン医療事務の芦野さん(さいたま総合診療医・家庭医センター)と前回DPCレクチャーを0から練ってくれた同じく医療事務の戸田さん(さいたま総合診療医・家庭医センター 今回は別セッション)です!セッションのコア部分は本当に頼りきりでしたが、とても安心して取り組めました。
今回は家庭医学セミナーで行う意義を参加者に感じてもらいたいという想いもあり、「患者の立場に立って医療費の考えよう」をテーマに内容を練り上げました。クイズでは、病気として同じ状態の患者でも金銭的背景や心理的背景によってマネージメントが変わるかといった内容を盛り込みました。各班の回答は皆異なっており興味深かったです。
8月6日の午前9時からのスタートで、医学生1ー6年生や初期研修医、看護学生、薬学部生、計34名と非常に多くの参加者にお越しいただきました。
導入の寸劇では、医療事務のいない夜間救急外来にて、肺炎で入院をさせようとした患者が医療費を気にして入院を渋ります。担当医師は入院費や検査費用について質問されるも答えられず自分の不勉強を嘆く、といったシチュエーションをみていただきました。
検査費用のクイズでは皆さん想像以上のリアクションで盛り上がってくれました。身近に行われている簡易な検査の点数の高さに驚かれたようです。
そして本セッションの山場であるDPC制度のレクチャーを乗り越えて、入院費を計算するワークに挑戦していただきました。
多くの班はこちらが想定していたよりも短時間で回答にたどり着き、ピタリ賞が続出する結果となったことは運営側としては嬉しい誤算でした。
もちろん今回のセッションでは計算を行えるようになることが目的ではなく、DPC制度の基本的な構造を知ることで適切な診断・検査・治療・記録(!)の重要性や、ある程度の検査費や治療費を知ることで患者の立場に少しでも立とうとすることの大切さを感じてもらうことが狙いでした。
参加した皆さんからは「入院費は思っていたより高い!」「これからは簡単に『検査しましょう』とは言えないと思った」「気になっていたが勉強する機会がなかったので参加して良かった」などの感想をいただき、アンケートでも高評価をいただきました。
医療費についてもテーマはこれから医療者になっていく学生や研修医にとって必ず必要でありニーズの高い分野であると再認識することができました。今後も色々と形を変えながら学びを提供していければと思っています!
チーフレジデント 上田篤
ある日のレジデントケースレビュー
2018年8月8日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
筑波大学総合診療科では、毎日外来で診た症例を振り返る、ケースレビューを行っています。
今日のケースレビュー、今ローテートしている初期研修医の服部先生が、ある患者さんの経過を図にまとめてくれていました。
おかげで症状の経過や内服薬の推移などの関係が、すっきりとまとまって頭に入ってきました。
プレゼンする際の症例の理解にも役立ちますね。
研修医の先生の日々の成長には、はっとさせられます。
お互いに学び合う環境の大切さをふと感じた、ある日のケースレビューでした。
セントラル総合クリニック 総合診療科
筑波大学総合診療グループ
山本由布
プライマリ・ケア連合学会学術大会 ポスター発表の振り返り
2018年8月8日テーマ:筑波総合診療グループ
先日行われた第9回プライマリ・ケア連合学会学術大会で、「全身に目を向け患者の訴えに耳を傾けよう~消化器症状で発症したCogan症候群の1例」という演題で、ポスター発表を行いました。
この発表に用いたのは神栖済生会病院で2017年8月に経験したCogan症候群の症例でした。Cogan症候群は聴力障害・めまいなどの前庭蝸牛症状、羞明・霧視などの眼症状を来す全身性血管炎で現在、世界で数百例のみの報告となっています。
五十野博基先生、細井先生の指導の下、以下のように準備を進めました。
まずCogan症候群の情報を入手することから始めました。
Cogan症候群の過去の症例報告、文献を検索してCogan症候群の症状、診断基準、治療、経過などの臨床像の典型例、非典型例の概要をインプットし、それらに対して本症例の新規性・特殊性、今後の臨床に役立つ一般化可能な有用性を抽出し、今回の発表で強調すべき点を明確にしました。
それらと並行してパワーポイントで作成すべきスライドの大枠を先に決定し、10~15枚を目安にスライドを作成しました。伝えたい情報を過不足なく重複なく盛り込むのは難しい作業でしたが、言葉の選び方、文章の構成、項目立ての仕方を変えることで、情報量を減らさずに文字数を削減することができました。
そのスライドをA0サイズのポスターに張り付け、レイアウト調整を行いました。見やすさと情報量のバランスが難しかったですが、最終的に伝えたいことを伝えられるポスターに仕上げることができました。
発表時間を確認し時間に収まるように発表原稿を作成しました。当院の内科医師の前で予演会を行い、その際に挙がった質問事項についても回答を準備し、また自宅でも練習を行い、原稿を暗記してから発表本番に臨むことにしました。
発表本番では暗記した原稿がポスターの内容とリンクすることと棒読みにならないことを意識しましたが、隣や前後で他の発表が行われている中での発表であり、聴く人全員に声が届いたか自信がありませんでした。緊張しましたが普段の練習通りの発表ができたと思います。
今回の学会発表の一連の準備を通して、学会発表、症例報告と対象となりうる症例を見つけ出すポイントを学ぶことができ、また普段の診療でそれを意識することの重要性を学びました。また発表資料の作成の手順、ポスター作製のポイント、原稿作成から発表練習、本番の発表までの一連の流れを経験し、理解を深めることができました。
今回は五十野先生のご指導、リマインドにより万全の準備で本番に臨むことができました。また細井先生からは病歴・所見の記載方法、文献検索から文献の読み込みに至るまで事細かに指導していただき、良い発表につながったと思います。ご指導いただいた先生方には心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
今後も今回の経験を活かして、より良い発表ができるように励んでいきたいと思います。
神栖済生会病院 内科 海老原 稔
【報告】文部科学省委託研究の報告書完成
2018年8月1日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
筑波大学 地域総合診療医学講座の片岡です。
このたび、平成29年度 文部科学省「大学における医療人養成の在り方に関する調査研究委託事業」の報告書が完成しましたので、ご報告します。
この委託事業は、平成27年度から3年間にわたり、「我が国における地域枠制度の実態・効果および地域枠学生のキャリア形成に関する調査・研究」と題して、全国の地域枠制度や地域医療教育の実態について明らかにするため、サイトビジット調査、webアンケート調査、専門医取得に関するアンケート調査を行ってまいりました。
この研究では、多くの皆様の協力をいただき、各大学や都道府県の非常に詳細な状況について明らかにすることができました。また、始まって間もない地域枠制度の課題や展望についても示唆を得ることができました。
改めて、研究にご協力いただいた皆様に感謝するとともに、この研究成果が地域枠学生や卒業生の皆さんの教育や支援に役立つことを願います。
また、この研究成果の一部について、前野先生とともにm3.comからも取材を受けました。筑波大学における地域枠や地域医療教育の状況とともに、3回シリーズで掲載されていますので、よろしければご覧ください。
国立大最大の義務年限付「地域枠」、その現状は? – 筑波大学◆Vol.1
全70大学の地域枠を調査、その実態は? – 筑波大学◆Vol.2
「県内出身者を対象とした地域枠」を中心にすべき- 筑波大学◆Vol.3
地域総合診療医学講座/大森医院
片岡 義裕
第3回プログラム説明会/懇親会のお知らせ
2018年7月31日テーマ:筑波総合診療グループ
第1回、第2回の説明会/懇親会も盛況のうちに終了し、残すところ、次回が今年最後の説明会/懇親会になりました。
第1回、第2回に参加できなかった医学生さん、研修医の先生方、もしくは卒後3年目以上の先生方はどなたでも、当総合診療グループのプログラムに興味がございましたら、ぜひお越しください。説明会のみ、懇親会のみのご参加も大歓迎です。ゆくゆくは緩和ケア医を目指したいという先生には、緩和ケア重点コースもございます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
参加希望のお申し込みは、soshin@md.tsukuba.ac.jp までお願いいたします。詳細は追って連絡いたします。
当日はカジュアルな服装でご参加ください。
◎第3回医局説明会
8月11日(土) 15時30分~18時 医局説明会@筑波大学内
18時30分~ 懇親会@筑波大学周辺
筑波大学総合診療グループ 東端 孝博
鹿行地区在宅医療推進 多職種研修会「地域連携、はじめの一歩」
2018年7月29日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 神栖, 地域包括ケア
(多職種研修会の様子)
神栖済生会病院・神栖地域医療教育センターの細井です。
今年度は茨城県の補助事業「医療提供施設等グループ化推進事業」に採択され、現在訪問診療を行っている神栖済生会病院と3つの診療所がグループを組んで、この地区の在宅医療を推進すべく様々な計画を立てています。
その第一弾として、2018年7月11日、茨城県立中央病院の看護局長である角田直枝先生を神栖市にお招きし、「地域連携、はじめの一歩」と題してご講演頂きました。
角田先生からは病院側も、そして地域側も自分の場所から一歩外へ出て、双方の視点に立つことの重要性を講義して頂きました。県立中央病院における様々な取り組み、例えば病院スタッフが近くの介護施設へ見学に行ってきてその施設の現状を知ったり、地域の介護職員に緩和ケア病棟の見学に来てもらったり、といった取り組みを紹介して頂きました。今回の講演の参加者は病院スタッフ、地域の医療従事者含め90名でしたが、参加者からは、「自分がいかに狭い世界で働いていたのかを痛感した」とか「今まで不平ばかり言っていた。近くの施設の現状を知ろうという気持ちすら浮かばないようになっていた」と自らを振り返るきっかけとなった様でした。まさに、「はじめの一歩」を参加者が踏み出せていたようです。
角田先生、ありがとうございました。
講演会終了後は、恒例となってきた地域の多職種との飲ミュニケーションでした。医療者が少ない苦しい中でも地域医療を何とか良くしていきたい!という熱い思いを持った皆さんとの語りは本当に刺激的です。総合診療医として少しでもお役に立てるように頑張っていきたいと思います!
今年は2018年8月に医療用SNSを神栖市内で拡充していくための会を開いたり、10月にアドバンスケアプランニングに関する市民公開講座で寸劇披露と有名な方のご講演を企画したり‥と盛りだくさんで企画していますので、ご興味のある方はぜひご連絡下さい。
神栖済生会病院・神栖地域医療教育センター 細井崇弘
臨床研究&学会発表振り返り
2018年7月17日テーマ:筑波総合診療グループ
C2の宮崎です。
先日行われた第9回プライマリ・ケア連合学会学術大会で、「一過性全健忘のケースシリーズ研究」についてポスター発表を行いました。
大変貴重な機会であり、皆様と共有させていただきたくブログに投稿いたしました。
〇研究動機
一過性全健忘とは診断基準があり、病歴と身体所見で診断ができ、予後良好と考えられている疾患です。発作以降の短期記憶の障害があり、病院受診した際も、「なんで病院にいるの?」ということを数分間隔で繰り返すような病気です。
一過性全健忘との出会いは2016年の筑波メディカルセンター病院(以下TMC)でした。当初私は初めての遭遇でしたので、頭部CT・MRIで精査しないといけないと考えていました。翌日のカンファレンスでスタッフの先生から一過性全健忘の疾患概念・精査の妥当性に関しては議論の余地があることを知り、非常に驚きました。
同年の秋に、JHospitalist network(以下JHN)で臨床疑問を執筆することとなり、一過性全健忘をテーマに選びました。執筆にあたり、海外の先行研究・レビューなどを読み進めていくうちに、診断基準・アルゴリズムを始め、精査で異常所見が出る可能性の非常に低いことを学びました。
また、日本の現場でのケースシリーズの発表例の少なさに、臨床現場での患者数・精査・入院・医療費に疑問を感じました。
JHN執筆後に、五十野先生、小曽根先生からも臨床研究にすることのご提案をいただいたため、症例集積研究を開始しました。
〇発表までの流れ
①研究プラン・倫理申請編
2016年年末から先行研究を集めて研究プランを立て始め、過去に倫理申請をした先生に申請方法を伺ったり、五十野先生・小曽根先生に伺いながら、初めての倫理申請書の作成を行いました。
2017年4月から所属がTMCになったので、倫理申請を開始し、審査委員会の先生と何度も不足している部分などご指摘を受けながら、7月に無事認可を受けることができました。個人情報の取り扱いをどうするか、2施設での研究でしたので、共同研究者になっていただく方への依頼・調整に最も苦労しました。
②データ収集編
データを業務終了後や休日、当直明け返上でエクセルにまとめていました。SPSSも初めてであり、エクセルでのまとめかたも非常に勉強になりました。当初はSPSSを意識したエクセルのまとめかたをしておらず、指導の先生から「見にくい」という指摘を受けたことがありました。欠損値についても学びました。
③PC学会発表編
いざ研究データをPC学会で発表しようという流れになり、2017年12月から抄録案を作成開始。2018年1月に抄録案提出。採択後、ポスター作成を開始しました。4月の段階でポスターの大筋は完成していましたが、相手にわかりやすく伝えるため、修正に修正を重ねてver 10までになっていました。指導の先生には何度もやり取りをしていましたが、発表前に大学院の「リサーチセミナー予演会」に参加させていただきました。予演会では発表・ポスターのデザインなどを多くの先生方にご指摘いただき、非常に良い経験をしました。レジデントの皆様も予演会を「リサーチセミナーの会」でさせていただけないか、お願いしてみたほうが良いです。建設的なご意見を非常に多くいただけます。
学会当日は多くのご質問をいただき、興味を持っていただいたことが大変ありがたかったです。
〇振り返り
企画段階から1年半は経過していました。研究を通して、研究設計の大変さ、データを収集する大変さ、研究結果をわかりやすくまとめるプレゼンデザインなどなど多くのことが学べました。初めて尽くしの臨床研究でしたが、何とか形にすることができたのは、筑波での熱心に指導してくださった五十野先生、小曽根先生を始め、周り先生方のサポートが充実している筑波だからできたと思います。
Next stepとしては、データをまとめて論文などに投稿することだと思います。すでにご提案はいただいているので、進めていきたいと思います。
〇後期研修の先生方へ
確かに楽ではありませんが、臨床疑問から始まり、研究として形にするのは非常に充実感があります。指導医の先生と相談をしながら、自分のテーマを見つけてみてください。
文責 C2 宮崎 賢治
餅による小腸閉塞のケースシリーズ研究
2018年7月11日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学, 水戸
先日行われた第9回プライマリ・ケア連合学会学術大会で、餅による小腸閉塞に関するケースシリーズ研究についてポスター発表を行いました。
この研究は、2017年春に行った餅による小腸閉塞の症例発表をもとにケースシリーズ研究へと発展させたものです。
以下はその振り返りです。
研究について
・当初は水戸協同病院でT-CReRO(つくば臨床医学研究開発機構)の先生が来てくれる臨床研究相談会に通っていました。クリニカルクエスチョンを立てるところから、作業手順、先行文献やデータの探し方まで、様々な相談に乗っていただきました。大変ありがたかったです。気軽にプロに会える機会はそうそうないので、水戸にいる皆さんはぜひご活用を。
・研究計画を立てる段階で解析するデータの項目を考え、自験例を収集したのち、先行文献から症例・データを抽出するという順に作業を進めました。しかし、文献の症例を読み込む中で自分の中に新しい仮説が形成され、それに合わせてデータの抽出項目や形式を変更し、抽出作業をやり直す必要がありました。先行文献の解析から始めたほうが効率は良かったと思います。
ただ、一方で自分の仮説が変遷していくのを感じながらデータの収集と仮説の形成を往きつ戻りつするのは面白い経験でした。私には必要なことだったと思います。
ポスターの作成について
・重複する言葉を削ったり表現を変えて短縮したりすることで驚くほど文章量を減らすことができたことに感動しました。(Gノートの原稿作業も並行して進めていたので)人に読んでもらうための文章と、見てもらうための紙面では文章の組み立て方が異なると感じました。
発表について
・ポスター発表は初めてで、まるで声が通らないので驚きました。口演と違いまったくスライドを見られないのも意外に影響が大きく、暗記したつもりだったのに流暢に話すことができず、苦戦しました。
初めての研究で試行錯誤しながら、ときどきモチベーションを失って作業が停滞することもありながらでしたが、何とかここまでたどり着けました。まだ、学会誌への投稿が残っていますので、もう少し頑張ります。
最初から現在まで定期的なリマインドとともにご指導し続けてくださっている五十野博基先生、本当にありがとうございます。先生の指摘は思いもかけない視点からやってくることが多く、とても刺激的でした。
そして最初に私の目の前に颯爽と現れて餅イレウスを一発診断し、学会発表にあたってはテーマとして提供してくださった木下賢輔先生、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
後期研修医2年目 木村紀志
Gノート「患者の理解をぐっと深めるコツとヘルスリテラシー」公開!
2018年7月8日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
GノートHPにて連載中の「みんなでシェア!総合診療Tips」の第4回「患者の理解をぐっと深めるコツとヘルスリテラシー」の執筆を担当しました。
この連載は、今年2月の家庭医療学冬期セミナーの特別企画で行われたプレゼンテーションの内容を発展させる形で、日本各地の総合診療専門医プログラムのTipsを共有しようという企画です。(冬期セミナーの記事はこちら)
4回目となる今回は、Ask Me 3、Teach backの二つの手法を使って患者さんの病状理解を深めるコツを解説しています。
今回のような執筆活動は初めてで、広く様々な人に読んでもらう記事を書くにはどうすればよいか、手探りでの執筆でした。阪本先生の多大なご助力と、羊土社編集部の方々の素晴らしい校正によって、わかりやすく、ためになる記事に仕上がりました!プロの編集者の方の校正を見るのは初めてで、文章をわかりやすくするためにはどのような表現にすればよいのか、大変勉強になりました。
ぜひご覧ください!!
後期研修医2年目 木村紀志
つくセミ2018始動!
2018年7月6日テーマ:筑波総合診療グループ
先日、つくセミ2018のキックオフミーティングが行われました。
つくセミとは、家庭医療★総合診療全国公開セミナー in Tsukubaの愛称で、専門を問わない学生、研修医などを対象とした筑波大学総合診療グループと筑波大学生スタッフによる手作りのセミナーです。
今年は11月17日(土)の午後に筑波大学で開催されます。
5周年という節目でもあるため全体の構成を見直し、誰でも気軽に参加できる新たなつくセミとなる予定です!毎年、参加者の方も講師共に楽しめるように、一生懸命考え総力戦で臨んでいます。
今年は8人の学生スタッフさんが企画から協力してくれることになり、初日から熱の入った話合いになりました。セッションテーマ選びには毎年苦戦していますね~。
また詳細が決まりましたら随時発信していく予定です。
興味がある方は、是非秋のつくばに遊びに来てください。
(文責 山本由布)
レジデント研究支援活動!
2018年6月30日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
(研究支援チームとレジデントのみなさん)
後期研修医は、研究のポートフォリオを作成することが必要ですが、すべての研修医が一から研究を行うのは難しく、当グループでも研究支援体制が課題になっていました。
そこで昨年発足したのが、レジデント研究支援チーム(指導医3名+後藤)です。
主に指導側が研究計画や倫理申請を行い、レジデント(昨年度は5名)にはアンケート用紙の作成や配布、データ入力など研究に周辺参加してもらいました。そして、データ解析後はそれぞれ担任を決め、学会発表に向けた抄録やスライドの作成を指導してきました。
最初のミーティングでは何がなんだか??という表情のレジデントでしたが、先日の学会(日本プライマリ・ケア連合学会学術大会@津)では堂々と発表してくれました!
学会発表後レジデントからは、
“皆さんと共同で作業・ディスカッションしながら進められたことはとても心強かったです。”
“担任を決めて相談相手が明確だったため、精神面で助けられた面もありました。また、抄録の作成登録や発表のスライド作りなど要所要所で複数の先生方からも意見をもらうことで、安心感もありました。”
“今後はResearch Questionを出す段階から研究に携わっていきたい、と思っています。”
“勉強不足、確認不足で答えられなかった質問があったのはやや心残りですが、3年ぶりに学会で発表できてうれしく、達成感を味わえました。”
という感想をいただきました。
指導側としてまだまだ課題はありますが、発表を終えたレジデントの表情をみて、大きな感動とちょっとした達成感がありました。
今年度のレジデント研究支援はすでに動き出しています。これからも指導医、レジデントと楽しみながら研究支援を行っていきたいと思います!
最後に、今回調査にご協力いただきました関連施設の皆様に深くお礼申し上げます。
後藤亮平
第1回プログラム説明会/懇親会のご報告と次回のお知らせ
2018年6月10日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
(プログラム説明会の様子)
(終わったあとは懇親会です!!)
以前告知していた通り、5月26日に当総合診療グループの後期研修プログラム第1回説明会と懇親会を開催しました。
地域に対する総合診療科の役割やつくばの充実プログラムについて前野教授のお話が1時間、その後には現後期レジデント4名が、それぞれの立場から、つくばに来た理由や実際のプログラムの感想について、100%本音で語ってくれました。
その後の懇親会では、参加していただいた研修医の先生方、医学生さんのモチベーションの高さに驚きつつ、「めざすなら本気で」と自らも初心を思い返す良い機会になりました。
今回参加できなかった医学生さん、研修医の先生方、もしくは卒後3年目以上の先生方はどなたでも、当総合診療グループのプログラムに興味がございましたら、第2回、第3回の説明会/懇親会にぜひお越しください。ゆくゆくは緩和ケア医を目指したいという先生には、緩和ケア重点コースもございます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
参加希望のお申し込みは、soshin@md.tsukuba.ac.jp までお願いいたします。
◎第2回医局説明会
6月23日(土) 15時30分~18時 医局説明会@筑波大学イノベーション棟105
18時30分~ 懇親会@筑波大学周辺
◎第3回医局説明会
8月11日(土) 15時30分~18時 医局説明会@筑波大学内
18時30分~ 懇親会@筑波大学周辺
筑波大学総合診療グループ 東端 孝博
第4回「つくば式ポートフォリオを100倍楽しむ会」を開催しました!
2018年6月3日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
(「つぼたの」集合写真。お庭の綺麗な会場でした。)
「つくば式ポートフォリオを100倍楽しむ会(通称:つぽたの)」に初めて参加しましたのでご報告します。
この会は、総合診療医の成長にとって必要不可欠なポートフォリオ学習に関する”レジデントのレジデントによるレジデントのための自主的な学習会”です。
「そもそもポートフォリオとは」から始まり、「何のためにやるのか」更には「どんなことを書けばよいのか」まで、現役レジデントのリアルな悩みを楽しく学びながら解消できる理想的な学習機会でした。
個人的には「ポートフォリオという単語は聞いたことがあるけど、実際にはよく分からない」という状態での参加でしたが、学習会が終わるまでに目からウロコが何枚もこぼれ落ちるほどの気付きが得られました。
特に、先輩レジデント達のポートフォリオを共有しながら皆で振り返る時間は、深い学び合いの機会であり、日々の臨床から得られた知識や体験を知恵として結晶化させる重要なプロセスであると感じました。
会場にも毎回工夫が凝らされ、4回目となる今回はつくば市にある国登録有形文化財”るーらるはうす”の蔵を貸し切って行われました。
非日常感のある素敵な文化財に囲まれながらの学習会は記憶に一層強く残ります。
次回の開催が今から待ち遠しいです。
筑波大学総合診療グループ/水戸協同病院 後期研修医1年目 田中伸哉
小曽根先生の研究が、米国家庭医療の雑誌に取り上げられました!
2018年5月16日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
総診グループの小曽根先生が行われた、血圧測定方法に関する研究が、
American Family Physician(AFP)のTop 20 Research studiesに選ばれました!
診療所や在宅医療の現場では、特に冬場など衣類を着たまま血圧測定をすることは珍しくありませんが、腕に何もつけていない状態と比べて、衣類をつけた状態での血圧の測定値はどれくらい違うのか、というのが研究のテーマです。
この研究は、以前Essential Evidence Plusにも取り上げられており(そのときの記事はこちら)、今回の報告もふまえて、有用なエビデンスとして、まさに世界で使われている証です!
小曽根先生を見習って、これからも世界のプライマリケアの現場の診療に役立つエビデンスを発信していきたい!と感じました。
片岡 義裕
多職種連携についての雑誌記事を執筆しました
2018年5月17日テーマ:北茨城
少し前になりますが、羊土社のGノート「何から始める!?地域ヘルスプロモーション」が発売されました。
今回私は「多職種連携」という項目を執筆させていただきました。
執筆経験豊富な横谷先生、吉本先生にご指導いただき、完成できました。ありがとうございます。
北茨城でジワジワと始まってきた活動と絡めて書かせていただきましたが、執筆を通して多職種連携のコンピテンシーを学び直すことができ、自分が多職種と関わる時に大切にしていることや、上手く行かなかった事など振り返ることができました。
今回書かせていただいた内容をきっかけに、この1年多職種の研修会にも取り組んでいく予定です。
診療所に出て、これから多職種と関わる方には初めの一歩として読むのにちょうどよいかもしれません。
よければ手にとってご一読ください。
筑波大学総合診療グループ/北茨城市民病院附属家庭医療センター 高橋聡子
ビンジ飲酒の研究が朝日新聞一面に掲載されました
2018年5月14日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
(朝日新聞に掲載されました!)
(アルコール研究メンバー 吉本尚(左)、斉藤剛先生(右))
先日4月2日の夕刊一面に、ビンジ飲酒に関する研究内容とコメントが
掲載されました。
「ビンジ飲酒」危険です
短時間の大量摂取 けが経験25倍
4月は新入生歓迎会や新人歓迎会などの機会が多い時期。
その時期に合わせて、我々の研究が取り上げられました。
アルコールの過剰摂取のうち、ビンジ飲酒は
その社会的インパクトから世界的に研究が進んでいる領域ですが、
日本ではまだあまり知られていない概念です。
「2時間程度」という比較的短時間の大量飲酒というと、日本では
飲み放題システムがぱっと頭に思いつく方も多いかと思いますが、
研究チームとしては、ぜひ飲み放題の在り方に関する議論が
盛り上がってほしいと思っております。
記事内には、新しく4月1日からできた寄附講座「地域総合診療医学」の
表記も入り、いいお目見えの機会ともなりました。
もしよろしければ、記事をお読みいただければうれしいです。
地域総合診療医学 吉本尚