「若手医師のための家庭医療学冬期セミナー」
2015年3月3日テーマ:筑波総合診療グループ
「若手医師のための家庭医療学冬期セミナー」に2月21日のみ参加してきました。
目的は、採用されにくいと言われるWSがどんなものか。家庭医療って何だろう。の2点でした。
参加したのは、WS7臨床研究と、WS15介護福祉制度(多摩ファミリークリニック大橋先生ら)です。
WS15では、主治医意見書の書き方、介護に関わる職種、入居施設について、主に知識を学びました。
主治医意見書は、介護にどれくらい手間がかかるかを伝えるものである。記載にあたっては、介護者が何に困っているのかを確認する。病気の細かい治療経過は不要で、介護に影響を与えることを書く「パーキンソン病で、すくみ足による歩行障害が顕著であり、常に見守りが必要、夜間せん妄もあり、深夜も目が離せない。」これは介護に手間がかかる。また、訪問調査は1回のみのため、転倒や誤嚥のエピソードを捉えきれない。転倒の頻度を各と、2次判定が変わる。認知症は根拠HDS-Rも記載。不安定とは、今後介護の手間が増す予測を示す。 水戸協同では、私のところへ記載依頼が来るので、指導はしていない。今後は「介護の手間」をより意識した書き方ができそうです。 職種、施設は、一般的なことを学びました。国家試験でやってかもしれないが、もはや忘れている。こんな言葉さえも知らなかったのかという介護福祉の内容で、よい復習の機会となった。 救急病院勤務では、患者のQOLは勿論大事。他方、再入院をへらすこと、新たな救急患者にベッドを空けることも大事。どれに対しても、ただ主病名を治療するだけではなく、退院前カンファランスで、病院での生活状況、病状と今後起こりうること、患者の病状に適した場所へ帰し、退院直後から必要なサービスを受けられるようにすることは重要である。ケアマネージャーらと積極的に意思疎通をはかっていこう。
知識の次は、個々の事例にどのように対応したら良いかという、疾患ではなく、介護に重点を置いたケースカンファランスを開いても面白いと思いました。病院総合医、家庭医、救急から緩和まで混じったつくばグループ内なら、より面白そうですね。
五十野博基
保健師ジャーナルへ寄稿したアルコールの記事が掲載されました
2015年3月3日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP
医学書院から出版されている保健師ジャーナル。
その名の通り、保健師を主対象にした学術雑誌ですが、
その2015年3月号でアルコールと健康障害が特集されました。
もともと多量飲酒やアルコール依存は保健活動において常に身近な問題ですが、2014年6月にアルコール健康障害対策基本法が施行されたこともあり、アルコール健康障害に関する最新知見,日本における状況と重要課題を明らかにし、対策を考えていこうという特集です。
その中で、
「アルコールと健康障害についてわかっていること 知っておきたい基礎知識」
という内容を寄稿させていただきました。
「地域を診る」ことを重視している総合診療領域の医師にとって、地域のことを非常によく知っている保健師との連携は非常に重要であり、こういった記事を通して保健師の皆様と関わりが深められれば、と期待しています。
(スタッフ 吉本 尚)
2月教育セミナーの運営に関わって
2015年3月2日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP
方針の決定等を行っていく場です。
無事開催することができました。
でした。
委員会活動では、各委員会に分かれて今年度の運営状況・情報共有と、今後の改善点を話しあう時間をもうけました。今回の続きは、4月のウェルカムセミナーで時間をもうける方針です。
楽しい観光写真を交えて、英語能力の大切さもさることながら、参加する目的を明確にして臨むことの
意義をお話していただきました。
参加へのハードルを下げていただき、レジデントが参加しやすいイメージを与えて頂けたので、
WONCA直前のタイムリーな講演はありがたかったです。
大人数を動かすことの難しさを学ばせていただきました。
反映させていただけることが多いです。
2月教育セミナー(2日目)に参加して
2015年3月1日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP
教育セミナーの2日目は、
「排尿障害、消化器疾患、生活習慣病総ざらい」というテーマでレクチャーがあり、
非常に実臨床に沿った内容でためになる内容でした。
また、CSAでは、訪問診療の導入面談のセクションを体験しました。
バックボーンとしての設定は非常に細かく、実際の患者様の家族と接する際に
気をつけるべき点等を学ぶことができました。
体験するだけでなく、それを使用しての主治医意見書作成を行うことで、
いかにして介護を必要とする患者様のためになるように情報をまとめるかも考えることができ、
振り返りをすることで今後の臨床に活かしていきたいと思います。
—————–【スケジュール】————————
2015年3月1日(日)2日目
10:00~12:10 レクチャー「排尿障害、消化器疾患、生活習慣病総ざらい」
12:10~13:10 昼食(ケータリング)&レジデント修了セレモニー
13:10~15:40 CSA「家庭医専門医模擬試験」(3症例CSA+主治医意見書作成)
15:40~16:00 レクチャー「主治医意見書の書き方」
16:00~16:30 まとめ
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筑波大学附属病院 研修医2年目 任 瑞
編集:阪本 直人
迅速な搬送のために
2015年2月25日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
北茨城周辺地域のタウン誌「びばじょいふる」11月号の「診療室から」に記事が掲載されました。
http://www.vivajoyful.com/vj.html
たびたび北茨城から日立に救急搬送の同乗をしている経験から
地域住民の皆さんに伝えたいことを書かせていただきました。
「迅速な搬送のために」
4月から北茨城市立総合病院(移転して11月から北茨城市民病院になりました)で勤務しています。今までもつくばや水戸など茨城県内で勤めてきましたが、ここ北茨城の景観の美しさや海の幸の美味しさには驚かされました。
さて、この地区にいると重症の患者さんを日立などの病院に搬送する救急車に同乗することがたびたびありますが、少し気になるのは救急車に道を譲ってくれない車が目立つことです。サイレンに気づかないのか、歩行者が前を横断してくることもあります。一緒に乗っていた患者さんのご家族は言いました「こんなによけてくれないなんて」。どうか皆さん、救急車がサイレンを鳴らして来た時は、誰かの大事な家族が一刻を争っていることを思い浮かべて停車して道を譲るようご協力ください。
ところで、救急車がどんなに急いでも医師がどんなに頑張っても縮めることの出来ない時間があります。それは、病気の発症から救急車を呼ぶまでの時間です。例えば、脳梗塞は治療開始が早ければ早いほど後遺症を残さず回復できると言われていますが、急に手足が動かなくなったり、ろれつが回らなくなったりしたのに、すぐに救急車を呼ばず何時間も様子をみてから119番したという方をこれまで何人も拝見しました。どんなに医療の技術が進歩しても、皆さん自身が自分の身体の危険なサインに気づいてすぐ行動するということが無ければ有効な治療にはつながりません。脳梗塞だけでなく、その方の病気の種類によって「こういう時はすぐ病院を受診するように」という症状があるはずですので、普段からかかりつけ医を持って緊急時の対応について確認しておくことが重要です。
私は総合診療医としてこれからも皆さんと地域のよりよい医療について考えていきたいと思っていますので、皆さんからも地域のことを色々と教えていただけると嬉しいです。
(北茨城市民病院 内科 宮澤 麻子)
ダリワリ先生によるレクチャー
2015年2月23日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
ダリワリ先生は、あのティアニー先生の一番弟子と言われ、UCSFで数々のベストティーチャー賞を受賞されている先生です。
我々レジデントから4つの症例をプレゼンテーションし、ダリワリ先生にレクチャーをしていただきました。問診や身体診察で新たな情報が出てくる度にダリワリ先生が解説。頭の中で変化する鑑別診断を、その思考回路の変化とともにホワイトボードに書いて下さいました。優秀な医師の思考過程を辿ると、自分の鑑別診断にいかに抜けがあるか、思考過程に隙があるかがよくわかりました。
診断とは何か、我々の診断能力を上げるにはどうしたら良いか、モチベーションを保つにはどうしたらよいか、ダリワリ流の方法を伝授していただきました。
2月19日波崎西小学校(喫煙予防教室)
2015年2月19日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP
2月19日 波崎西小学校に「たばこの話」をしにいってきました。
今回2回目です。
つくばから約二時間、利根川沿いを車で運転しながらいきました。
前回大雨だったのと運転とセミナーに対する緊張で景色をみる余裕はなかったですが、
今回は晴れていて2回目だったのもあり川沿いの景色を楽しみながら向かいました。
木造のあたたかみのある校舎で話をさせていただきました。
この学校は震災の時に避難所として使用されていたようで「自分の命は自分で守る」と大きくかかれた
張り紙が張ってあるのが印象的でした。
対象者は6年生で人数は前回の3分の1程度の約35人、場所も体育館から教室と
こじんまりとした規模で行いました。
内容は前回と同様、喫煙の害・依存・ピアプレッシャーについて話ました。
今回は前回のスライドを少し改訂し、中学生用の内容で小学生の学習要項にあてはまるものを
ピックアップしおりまぜました。
人数が小規模だったこともあり、比較的集中して話をきいてくれている印象と、織り交ぜた動画
(実際のタバコの煙がどの程度広がり、健康被害を受けないためにはどの程度の距離まで離れたほうが
よいか、等)に素直に驚いた反応してくれている姿をみて今日のことが少しでも記憶に残ってくれるといいな、と感じました。
聴いている学生・場内が盛り上がることと、知識を持ち帰ってくれるかどうかは
必ずしもイコールではないので、話す内容にどんな反応を示しているか、興味を持って
聴いてくれているか、観察する技術が必要で、リアクションを見ながら流動的に話す側も
変化させていかなければならない難しさを体感しました。
元来、人前で話をするのは、苦手な方ですが貴重な体験をさせていただきました。
回数を重ねると少し冷静にまわりの反応をみれる実感がわき、楽しむことができました。
今後もなんらかの形でセミナーやレクチャー等ありますが準備をしっかりするのはもちろん、
今回の経験をいかし、どう伝えるかを考える余裕をもてるように学んでいきたいと思います。
ご指導していただいた先生方ありがとうございました。
S. Takahashi(シニアレジデント2年)
編集:N. Sakamoto
介護予防フェスティバルin北茨城
2015年2月18日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
2月14日に北茨城市民病院で行われた「介護予防フェスティバルin北茨城」の中で、横谷先生が「今からできる健康づくりから老いの支度まで~地域でいきいきと生きる~」と題した住民向けの講演を行いました。
ロコモ予防の話では実践を交えながら楽しく今日からすぐできる体操の紹介(お手本のスライドで大学総診ローテート中の長野先生が大活躍)。
「老い支度してますか?」の問いかけで始まるアドバンスケアプランニングのお話では身内の経験談も紹介しながら「これからのこと」を身近に考えさせる内容。
「家庭医とは」の紹介もここまでの盛り上がった流れから住民の方々にしっかり受け止めていただけている雰囲気でした。
そして、どこで最期を迎えるかの話題から北茨城に新設される家庭医療センターの紹介で講演は和やかに終了しました。
大会議室を埋め尽くした180人ほどの年代も様々な参加者を1時間半、随所に笑いを交えながら飽きさせずに話し続けられる横谷先生の話術を是非見習いたいと思いました。
主催の茨城県理学療法士会や運営を手伝って下さっていた北茨城市のボランティアを始めスタッフの皆さんにこの場を借りて感謝申し上げます。何よりこの場に集まって下さった熱心な住民の皆さんの姿に感激して、センター開設に向けて私も気持ちを新たにさせていただくことができました。
北茨城市民病院 宮澤 麻子
土浦在宅医療・介護連携拠点事業 地域リーダー研修会に講師として参加しました!
2015年2月16日テーマ:筑波総合診療グループ, 未来医療GP
大学院4年の伊藤 慎先生の初期研修医のストレス対処能力と抑うつに関する研究論文がMedical Educationの「in this issue」に選ばれました!
2015年2月10日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
大学院地域医療教育学分野博士課程4年の伊藤 慎先生の初期研修医のストレス対処能力と抑うつに関する研究論文 「Can we predict future depression in residents before the start of clinical training?」が、Medical Education 49:215-223,2015に掲載されました!この論文は掲載号の「in this issue」に選ばれ、伊藤先生へのインタビューがPodcast配信されました!
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.12620/abstract
この研究は、ストレス対処能力を示す指標の一つである首尾一貫感覚(sense of coherence:SOC)に着目し、SOCスコアが研修医の将来の抑うつの予測因子となりうる可能性について検討することを目的としたもので、臨床研修病院251施設で研修を開始する1年目初期研修医を対象として調査を行いました。
結果では、研修開始3か月後に新規抑うつ症状を呈した研修医は、SOC高値群(ストレス対処能力が高い群)では11.3%であったのに対して、SOC低値群(ストレス対処能力が低い群)では41.2%と、SOC低値群ではSOC高値群と比較して約3倍、新規抑うつ症状を呈しやすいことが示されました(オッズ比 3.11)。
研修開始前にSOCスコアを評価する事で抑うつのハイリスク群を同定する事が出来、抑うつの早期発見、早期介入の一助となる可能性が示唆されました。
研修医の抑うつは、研修医自身にとってはもちろん、臨床におけるパフォーマンスについても影響を及ぼすことから患者にとっても重大な問題であり、研修医が安心して研修・勤務を行える環境を整えることは大変重要です。研修医のサポートにあたる指導医やプログラム責任者にとって有用な結果が示されたのではないかと考えられます。
伊藤 慎先生おめでとうございます!今後のますますのご活躍を期待しております。
(筑波大学大学院地域医療教育学分野 前野貴美)
第1回 J Hospitalist Network
2015年2月9日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP
第1回J Hospitalist Networkに参加してきました。
70名を超えるHospitalistの先生方が全国各地から集まっていました。
会場内は熱気と活気でいっぱいでした。
今回は、「生活歴ですが、飲酒は焼酎●合/日で・・・・。 じゃあどうしよう?
アルコール介入はじめの一歩」というテーマで、
五十野先生、山本先生、浜野先生、水戸協同病院の小林先生、梶先生、片山先生、
上村先生、大澤のメンバーでワークショップをさせていただきました!
20-30名ほどの初期研修医から指導医の先生方が参加して下さいました。
水戸協同病院の先生方からは、アルコールの害や健康問題、
アルコール依存症と危険飲酒の違いなどについてレクチャーがありました。
その後に、危険飲酒というカテゴリーの人たちが、今後アルコール依存症になるのを
未然に防ぐため節酒を目指す動機づけ面接が出来るようになりましょう、
というお話をさせていただくのが今回の私の役目でした。
飲みたい or お酒減らしたいという2つの対立する気持ちで揺れている(両価性)患者さんに
以下の5つのポイントに気をつけて面接を行い、節酒につなげていこう!というものです。
- 飲みたい/やめたい 理由を聞く (患者さんの背景をさぐる)
- 患者さんとけんかをしない (相手を否定しない。)
- 患者さんからのアルコール問題への「抵抗」を受け入れる(けんか別れはせずに、
継続的に外来を続ける事を目指す) - 共感・思いやりの言葉をしっかりと表現する (信頼関係を築く)
- 患者さん自身の言葉から節酒へ繋げる (患者さん自身の心の変化をサポートする)
入院の方も外来の方も「主訴」のみに対応するのではなく、必要であればアルコールについても
Problem listにあげ、しっかりと対応出来る医師になりたいと思います。
(レジデント 大澤さやか)
第4回 S1レジデントDay
2015年2月8日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP
第4回S1レジデントDayを行いました。
今回は神栖や水戸で研修しているS1も集まり、久々の全員8名参加となりました!
忙しい日々にも関わらず、一人一人が地域毎、病院毎に新しい学びを得ており、
各自刺激を受けたのではないでしょうか。
今回のレジデントDayは、ポートフォリオ検討会と内科認定医試験についての2本立てでした。
ポートフォリオ検討会は全員が発表し、同期や指導医の先生方からフィードバックをいただきました。
継続性、医師患者関係の構築、MCAM、CGA、具体性、一般化とキーワードが沢山でました。
また、指導医の先生とのやり取りの中で、「どうして患者さんはそう言ったのか、
なぜ自分はそうすると良いと思ったのか」と、自分の中に一瞬芽生える<なぜ><どうして>に、
いかに気付き考えるのか、そういう大切さを実感しました。
検討会の後は、内科認定医についての対策と注意点についてS2の永藤先生から教えていただきました。
提出サマリーを各自頑張って書き上げている最中だと思いますが、期限まで後3週間がんばりましょう!
終了後はS1全員で食事に行ってきました。
4月にあるTsukuba総診のwelcomeセミナーや次回レジデントDayの話を、
おいしいイタリアンを食べながらできました。
同期が多いのでこうやって近況や今後を話し合っているだけで、いつの間にか
お互いのモチベーションが上がっている事に気づかされます。
さて最後に、今回のレジデントDayで個人的に印象に残った言葉です。
「この医者には病気以外のこと何でも話してよいんだ と患者さんに思われるようにしたい」です。
患者さんを知り患者中心の医療を行うには、医師の考える枠組みの外に目を向け、
それを承認する姿勢から始まるのではと思いました。
S1 大澤 亮
編集:阪本直人
Night Session 患者中心の医療の方法(PCCM:patient centered clinical method)
2015年2月6日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
今夜は「患者中心の医療の方法」について大塚貴博先生に教えていただきました。
患者中心の医療は、間違えて捉えてしまうと“顧客第一主義,患者さんが全て主義”となりがちですが、患者中心の医療とは患者さんと医師との間で、患者さんが抱えている問題に関して『双方の解釈をつなぐ事』で始まる医療となるそうで、患者中心と言いつつも、患者さんの想い・解釈だけでなく医療従事者の想い・解釈の双方で成り立つべきものだと気づかされました。
もちろん患者中心の医療にはエビデンスがあります。
患者中心の医療は、医師患者関係の強化につながり「患者の苦痛・心配の軽減や症状の改善等」を認めるそうです。ただし、いつもPCCMを使う必要はないそうです。患者さんが抱える問題がシンプルな場合は、PCCMは使わず、さくっと治療してあげてください。
どのように患者中心の医療を実践するかについてです。
2014年に患者中心の医療のモデルが少し改変され、PCCMの実践には、illnessとdiseaseに加え、患者の「健康についての認識・経験(健康感)」の3つを行き来しながら解釈をつなぐ事になります。この健康感は患者固有のもので、信念や価値観に近いものとなるそうです。
では、どのように解釈をつなぐかですが、その手段としては ①解釈に関する情報を集める段階と②その情報から解釈をつなげる段階があります。情報を集める時に、「かきかえ」を行うことも良い方法となるそうです(かきかえについては過去のブログを探してみて下さい、必ず詳しく載っているはずです)。
次に、集めた情報から患者医師双方の解釈をつなげる段階についてです。この時は3つのことに焦点を当てると良いそうです。
- 患者さんの抱える問題を定義する
- 治療目標を設定する
- 患者医師の役割を決める
の3つです。これらを通して、患者医師間(の解釈)をつなげる橋を探しいくことになるそうです。探すという言葉示すように、医師が一方的に問題や治療目標を決定するものではないそうです(この時、医師が陥りやすい具体的な間違いは・・・とありますが、それはTsukuba総診にいらした際にたずねみてください)。
レクチャーの後に、実際の症例をもとに討論を30分ほど行いました。ここでは、患者さんが医師の提案にのってこない場合、患者医師は一見同じ方向を向いているようでも、実はどこか微妙なところで解釈がつながっていない事に気づきました。
ここまで、PCCMについてあーだ,こーだと書きましたが、PCCMに限らず、いくら言葉で理論を学んでも、すぐに臨床の場で実践できるようにならないそうです(もちろん、背景となる理論がなければ、実践もできませし、実践するべき事ではないとも思います)。実践の場では、言葉では言い表せない“暗黙知”が無数に隠れているそうなので、学んだ後は実践あるのみです。
最後に。私もPCCMを意識しながら臨床に取り組んで行きたいと思いましたが、パターナリズムのような医師にとっての拠り所が少ないPCCMは、実践の場ではとても葛藤を伴うため油断していると直にパターナリズム側に引き寄せられてしまいそう(すぐに自動思考に陥ってしまいそう)だなと感じました。
(レジデント 大澤亮)
雑誌「治療」を執筆しました
2015年2月5日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
ちょっとしたコミュニケーションで、意図せず一緒に働く
スタッフのモチベーションを上げたり下げたりした経験は
皆さん持っているのではないでしょうか?
新しく表紙と内容がリニューアルされた雑誌「治療」。
その2015年2月号「その気にさせる伝え方」に、
浜野淳先生、中澤一弘先生、吉本の
記事が載りました。
浜野先生の書かれた「チーム力を高めるコミュニケーション」、
中澤先生の書かれた「ただしい″ほうれんそう″―押さえておきたいビジネススキル④―」
はどちらも筑波大学の総合診療グループで重要視しているノンテクニカルスキル
に関係しています。外来や病棟でのチーム、地域での連携など、
組織をマネジメントしていくためにこのようなノンテクニカルスキルは必須となっています。
スタッフとのちょっとしたコミュニケーションにも配慮できる、
そういった医師・医療者が増えてほしいと願っています。
興味のある方は、ぜひご覧いただければ幸いです。
Night Session「家族志向ケア」
2015年1月30日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
Night Sessionのテーマは「家族志向ケア」でした。
診察室で会う患者さんも、様々な家族の一員として、家族と互いにいろんな影響を与え合いながら生活している、
そんな患者さんが診察室に来ているんだ!ということを意識することで診療に幅や深みがでるというお話でした。
例えば、喘息発作を繰り返す子供の生活環境や家族の状況はどうか?(お父さんはタバコを吸わないか?)
例えば、うつ病の患者さんに薬を処方したが、次回診察のときに内服していなかった。(実は、母親が頭に効く薬は怖いから飲むなと言った。)
例えば、転倒契機の大腿骨頚部骨折でADLががくっと落ちてしまった人が自宅に帰るときになにを考えたらいいのか?(介護可能な人はいるのか?)
などなど、患者さんの家族についても気にかけていかないと診療が上手くいかない場面を紹介していただきましたが、
とても納得のいく内容でした。
Sessionの中で「家族図」の紹介がありました。患者さんを中心にその家族関係を図示するというものです。
家族構成のみを示す家系図のようなものとは違い、親しい家族関係なのか、敵対もしくは疎遠な関係なのかなども含めて図示するものです。
家族関係を視覚的に捉え、俯瞰するためにとても有効だということがわかりました。
今後も様々な家族背景の患者さんを見て行く事になると思うので、すこし困ったときや迷った時には
家族図を書いてみようと思いました。
広い視点で患者さんを捉えるということができるようになり、今後の診療の向上に繋げる事が出来ればと思います。
(レジデント 大澤さやか)
浜野先生の論文がパブリッシュされました!!!
2015年1月29日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
浜野先生の論文がGeneral Medicine に掲載されました!!!
Risk Factors and Specific Prescriptions Related to Inappropriate Prescribing among Japanese Elderly Home Care Patients
と題し、徳田先生とご一緒に、在宅におけるPolypharmacyや不適切投与について、複数施設の在宅患者におけるPolypharmacyや薬剤の不適切投与に関してお書きになりました。薬剤数が多い場合(今回は6剤以上に設定)、転倒歴などがある場合などは不適切投与の可能性があるということや、在宅患者でも3人に1人に不適切投与があるとのことです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/general/15/2/15_117/_pdf
病棟業務のみならず、大学や病院の教育、会議などなど超ご多忙ななか、成果を残されていらっしゃる浜野先生に、周りも触発されます。本当におめでとうございます!
(スタッフ 堤円香)
第2回つくば総合診療塾 「やってみよう!家族志向型アプローチ」
2015年1月27日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
未来医療人GP企画医学生のための「つくば総合診療塾」第2回セッションが1月21日の夕方に開催されました。テーマは「家族志向型アプローチ」です。前回に引き続き遠隔中継で埼玉医大からWeb参加もいただきました。講師は大塚貴博先生です。
セッションでは、大塚先生が研修中に病棟主治医としてかかわったケースを用いて討論を行ないました。80代の女性、急性疾患の治療の見通しがつき、退院について同居の長男さんに相談したところ、入院中にADL(Activity of Daily Living)の下がった母親を受け入れるのは難しいとのこと。近所に住む長女さんにも相談をしてみましたが、話の冒頭から「今はみれません!!」との言葉が聞かれ・・・。「さあ、皆さんだったらどのようにその後の家族面談を進めますか?」
グループ討論では、「お母さんが家に帰りたい思いをもう一度伝えたい」「長男と長女の関係が気になる」「長女の『今はみれない』・・の言葉が気になる。本当はお母さんの介護をしたいけど、なにか事情があるのでは?」などの様々な意見がだされました。
実際は、大塚先生が長女さんの思いを聞き始めたところ「定年までのあと1年の間にどうしてもやりとげたい仕事があるのです。それをおえてから母と一緒に住もうと思っているんです」との言葉が聞かれました。長女さんはキーパーソンであることもあらためてわかり、「(長女さんの思いや生き様に)そうだったんですね」と深く共感しながらのやりとりが続きました。一時施設に行くことも念頭に入れて、施設見学に行っていただきましたが、結局は長女さんが長男さんに「1年間なんとか家で(母親の介護を)頑張って欲しい」と説得して、家族で方針を決めてお母さんは無事希望通りに自宅へ帰られたとのことでした。
まとめのレクチャーで、「家族の木」を用いて、目の前の患者さんは一人でもその背後には木があり、多くの家族メンバーがいることをイメージしながら診療することの大切さを説明しました。大塚先生の「今回、長女さんの言葉の背景にある意味に関心を持ったことをきっかけに、家族の思いにアプローチすることができた。医師である自分が、バランスを失いかけていたこの家庭の「家族の木」にのぼり、娘さんのいる枝の傾きをちょっとだけ動かしてみたことが、家族自身でバランスをとり戻すきっかけになったんですね。」との解説に、参加者はなるほど~と納得と感動の表情を見せてくれました。振り返りでは、「家族を支える」ことの意味を具体的に知ることができたとの声も聞かれました。
次年度は本格的な総合診療塾のコース(計10回の予定)を開講します。是非ご注目ください!
家族の木 松下明監訳.家族志向のプライマリ・ケア.シュプリンガー;2006.より転載
(文責 スタッフ 高屋敷明由美)
2015年つくば総合診療グループ教育セミナーのご案内
2015年1月23日テーマ:筑波総合診療グループ
2015年教育セミナー担当 代表 五十嵐淳
つくば総診では、総診について学ぶためのセミナーとして、年3回(4月、9月、2月)の定期的なセミナーを開催しております。今回は、今年度最後となる2月の教育セミナーのご案内をお送り致します。セミナーの対象は主に総診の後期研修医ですが、総診に興味がある学生、初期研修医から指導医まで幅広くご参加頂いております。
今回は、日常診療で必要なコモンディジーズや主治医意見書作成についてのレクチャー、また、家庭医専門医模擬試験と題するCSAを予定しております。
レクチャーは、生活習慣病のアップデート総ざらい、排尿障害への対応、消化器疾患への対応について、後半では主治医意見書作成の仕方についての講演となります。講師は、筑波メディカルセンター病院泌尿器科及川剛宏先生をお招きし、また、総合診療グループより、水戸協同病院総合診療科木下先生、筑波メディカルセンター病院在宅ケア事業部有田圭介先生に依頼し、コモンディジーズへの理解を深めます。また、筑波大学病院総合診療科浜野淳先生に依頼し、なかなか教わる機会のない主治医意見書の書き方についても学びます。明日への診療にきっと役立つことと思います。
また、CSAは家庭医専門医が作成した3症例で、診療所・病院どちらでも経験すると思われるシナリオを用意しており、主治医意見書の作成も行います。模擬患者にもご協力いただき、家庭医専門医試験の雰囲気を感じつつ、実践的で、普段の診療のスキルを確認できる良い機会となっております。
その他、レジデント終了セレモニーで、筑波総診の後期レジデント修了者のプレゼンテーションも予定されています。後期研修の雰囲気も掴めると思います。
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日時:2015年3月1日(日)9時30分~16時30分
場所:筑波大学医学専門学群 学群棟4A411
参加費:無料
タイムテーブル
9:30~受付開始
10:00~12:10レクチャー「生活習慣病総ざらい、排尿障害、消化器疾患」
12:10~13:10昼食(ケータリング)&レジデント修了セレモニー
13:10~15:40CSA「家庭医専門医模擬試験」(3症例CSA+主治医意見書作成)
15:40~16:00レクチャー「主治医意見書の書き方」
16:00~16:30まとめ
16:30片付け・解散
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参加希望者は、 soshin@md.tsukuba.ac.jpへご連絡をお願い致します。
皆様、奮ってご参加ください!!
植松小学校での喫煙予防教室(2015年1月22日)
2015年1月22日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 未来医療GP
1月22日 神栖市の植松小学校の6年生に「たばこ」の話をしてきました。
前回の久野先生のブログ同様、タバコの害と依存性、そして、ピアプレッシャーについて話をしました。
1学年が100人以上だったので体育館にて行いました。
あいにくの雨で寒い中で尚かつパソコンの不具合もあり、始まる前はどうなることかと思いましたが、
元気に質問に答えてくれ、手伝ってくれた筑波大学の学生さん2人も盛り上げてくれたので、
私も緊張がとけ、楽しむことができました。
今回は、たまたま、同行してくださった神栖市の方が海外のたばこを持ってきてくださいました。
生徒さん達にとっては、グロテスクなタバコのパッケージがとても衝撃的だったようで興味津々でした。
クイズを交えながら、遊びながら、身体を動かしながら学んでもらいましたが、
彼らが今日の話を自分なりに理解し、まわりの人にアウトプットしてくれればいいなと感じました。
今回、このような講演を初めて行いましたが、話し方・テンポ・抑揚の付け方など、
学ぶ点が多くありました。
幸いもう1度行う機会があるため、内容も含め次回は自分なりの工夫ができたらと思います。
貴重な機会をありがとうございました。
つくば総合診療グループ 後期専門研修医 高橋
編集:阪本直人
大西先生レクチャー ~Family Medicine History in America~
2015年1月20日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
Oregon Health and Science University(オレゴン健康科学大学)の家庭医療科の大西恵理子先生による、「Family Medicine History in America」をテーマにしたレクチャーが行われました。
今回はアメリカにおける医学の発展と、それに伴うFamily Medicineの変遷について教えていただきました。
ヨーロッパに比べて歴史の浅いアメリカですが、アメリカの急速な発展に合わせて急速に医学が発展するなかで医学は細分化・臓器別化が進み、科学的視点の多い臓器別分野に比重が置かれるようになりました。その中で少数の医師がFamily Medicineの必要性を訴え、学会を立ち上げたり教育グループを立ち上げるなどし、その後発展させていったとのことでした。なかなか今までこういった歴史について学ぶ機会はなく、Flexner report、Grandfather clauseなど知らない知識や単語もたくさん登場し、勉強になりました。
レクチャー中に、日本の家庭医療の発展の歴史についても前野教授に補足していただきました。日本の家庭医療も今まさに発展途中ですが、両国の家庭医療の発展の姿には共通点がとても多く、まるで日本がアメリカを20~30年遅れで追いかけているかの様でした。前野教授からは最後に「このまま日本がアメリカのFamily Medicineを追いかけるように発展すれば、日本の家庭医療の将来は明るいですね」とのコメントも。
我々レジデントも更に研鑽を積んで、日本の家庭医療の発展に少しでも貢献したいですね。
S1 稲葉 崇