Night Session 患者中心の医療の方法(PCCM:patient centered clinical method)
2015年2月6日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座
今夜は「患者中心の医療の方法」について大塚貴博先生に教えていただきました。
患者中心の医療は、間違えて捉えてしまうと“顧客第一主義,患者さんが全て主義”となりがちですが、患者中心の医療とは患者さんと医師との間で、患者さんが抱えている問題に関して『双方の解釈をつなぐ事』で始まる医療となるそうで、患者中心と言いつつも、患者さんの想い・解釈だけでなく医療従事者の想い・解釈の双方で成り立つべきものだと気づかされました。
もちろん患者中心の医療にはエビデンスがあります。
患者中心の医療は、医師患者関係の強化につながり「患者の苦痛・心配の軽減や症状の改善等」を認めるそうです。ただし、いつもPCCMを使う必要はないそうです。患者さんが抱える問題がシンプルな場合は、PCCMは使わず、さくっと治療してあげてください。
どのように患者中心の医療を実践するかについてです。
2014年に患者中心の医療のモデルが少し改変され、PCCMの実践には、illnessとdiseaseに加え、患者の「健康についての認識・経験(健康感)」の3つを行き来しながら解釈をつなぐ事になります。この健康感は患者固有のもので、信念や価値観に近いものとなるそうです。
では、どのように解釈をつなぐかですが、その手段としては ①解釈に関する情報を集める段階と②その情報から解釈をつなげる段階があります。情報を集める時に、「かきかえ」を行うことも良い方法となるそうです(かきかえについては過去のブログを探してみて下さい、必ず詳しく載っているはずです)。
次に、集めた情報から患者医師双方の解釈をつなげる段階についてです。この時は3つのことに焦点を当てると良いそうです。
- 患者さんの抱える問題を定義する
- 治療目標を設定する
- 患者医師の役割を決める
の3つです。これらを通して、患者医師間(の解釈)をつなげる橋を探しいくことになるそうです。探すという言葉示すように、医師が一方的に問題や治療目標を決定するものではないそうです(この時、医師が陥りやすい具体的な間違いは・・・とありますが、それはTsukuba総診にいらした際にたずねみてください)。
レクチャーの後に、実際の症例をもとに討論を30分ほど行いました。ここでは、患者さんが医師の提案にのってこない場合、患者医師は一見同じ方向を向いているようでも、実はどこか微妙なところで解釈がつながっていない事に気づきました。
ここまで、PCCMについてあーだ,こーだと書きましたが、PCCMに限らず、いくら言葉で理論を学んでも、すぐに臨床の場で実践できるようにならないそうです(もちろん、背景となる理論がなければ、実践もできませし、実践するべき事ではないとも思います)。実践の場では、言葉では言い表せない“暗黙知”が無数に隠れているそうなので、学んだ後は実践あるのみです。
最後に。私もPCCMを意識しながら臨床に取り組んで行きたいと思いましたが、パターナリズムのような医師にとっての拠り所が少ないPCCMは、実践の場ではとても葛藤を伴うため油断していると直にパターナリズム側に引き寄せられてしまいそう(すぐに自動思考に陥ってしまいそう)だなと感じました。
(レジデント 大澤亮)