大西先生のレクチャー「非癌性慢性疼痛コントロールにオピオイドの適用はあるのか?」
2015年10月22日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP
大西 恵理子先生の朝レクチャー
「非癌性慢性疼痛コントロールにオピオイドの適用はあるのか?」
本日は、米国のオレゴンで家庭医としてご活躍中の大西先生のレクチャーです。
私の勝手なイメージですが、いろんなことが米国は進んでいるんだろうな~って思っていました。
今日は、そんな僕のイメージを覆す、米国での疼痛治療における医療用麻薬の実態を知ることができました。
なかなか聞けないお話でしたのでブログに載せたいと思います。
日本では、慢性疼痛にいわゆる麻薬(強オピオイド)をよく目にするようになったのは、フェンタニルの貼付剤が保険適応になってからなので、ごく最近のことと思います。
実は、米国では早くから製薬企業などのプロパガンダなどもあって、1999年~2010年まででオピオイドの販売が4倍になったそうです。
ちなみに、米国での使用量は、日本のなんと27倍(2010年)もあるそうです・・。
日本では、基本的に癌性疼痛の治療しか認められていないオピオイドがほとんどですが、米国では、急性疼痛はもちろん、非癌性の慢性疼痛でも使用するそうです。
びっくりなのは、オピオイドを歯科治療、骨折や腹痛に対しても使用しているそうです。
急性疼痛、特に腰痛治療の使用では、なんと半数の人は5年以上服薬している・・・使用の慢性化という実態もあるそうです。
大西先生のいらっしゃるオレゴンでは、患者さんの5人に1人がオピオイドを飲んでいるそうで、
疼痛の苦しみから開放される患者さんがいる一方で、望ましくない事態も起きているとのことでした。
患者さん側が疼痛のいろんな状況で、オピオイドを使用してきた経験があると、
必ずしも必要ではない疼痛マネージメントの際にもオピオイドを強く希望する患者さんもおられるそうです。
「家庭医としては出したくないけど・・どうしよう」という葛藤がすごく伝わってくるお話でした。
日本も今後同じ道をたどらないかやや心配ではありますが、一番の救いは法律の縛りのおかげで、
国民全体が使わない生活が当たり前と思っていることと思います。
ある意味、日本は救われたな~と実感するお話でした。
今日は、なかなか聞けないお話を聞けてとても参考になりました。
ありがとうございました。
文章:筑波大学大学院 地域医療教育学(総合診療) 修士1年 佐藤 卓也
編集:筑波大学大学院 地域医療教育学(総合診療) 講師 阪本直人