家庭医療学夏期セミナー セッション「あなたならどうする? ~家族が食べられなくなったとき~」
2018年8月19日テーマ:筑波総合診療グループ
今年も全国各地から、医学生・研修医、コメディカルの方達まで、貴重な夏休みを利用してたくさんの方が「第30回 学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー@湯河原」に参加しました。
私は意思決定支援をテーマにした「あなたならどうする? ~家族が食べられなくなったとき~」というセッションを担当しました。
内容は、提示した症例についてグループごとにディスカッションをし、各選択肢(経口摂取継続・胃瘻・経静脈栄養)を選んだ場合のイメージを掴んでもらうためのブース毎のミニレクチャーを通じて、再度皆で症例について考え意思決定の疑似体験をしていただくというものでした。
「どのように生きていくのか」「本人の意思が明確にわからない場合、家族がどう本人の今後を決定していくのか、医療者側はそれをどうサポートしていくのか」。高齢化社会の現代では、家族側としても、医療者側としても今後何度も直面するテーマです。
参加者さんに実際に難しい選択を迫られる患者家族の側に立って感じてもらい、医療の現場で使っているツールや意思決定支援の流れを簡単に紹介し、今後医療者側として働くようになった際にも生かしてもらえればという企画です。
このセッションがあったのは8月4日から3日間あるセミナーのうちの最終日の朝。
疲れがピークに達するであろうにも関わらず、医学生1-6年生から初期研修医、看護学生など計14名の方が参加してくれました。3日目ということもあり、各グループとも皆さんすぐに打ち解け和気あいあいとスタートしました。
提示した症例は、認知症である自分のおじいちゃん(もしくはおばあちゃん)が誤嚥性肺炎を起こしたというもの。医師からは患者は嚥下機能が低下していて、今後経口摂取をすれば誤嚥性肺炎を起こす可能性が高いと言われます。選択肢としては胃瘻、経鼻胃管、点滴、経口摂取継続の4つ。初めのディスカッションでは参加者の皆さんの多くが「食べるのが大好きだった」という設定の本人の意思を尊重し、経口摂取を選ぶ方が多かったのが印象的でした。
ブース毎のミニレクチャーでは胃瘻に使うチューブやCV、経口訓練に使うとろみ剤の実物を用意し、皆さん興味津々で質問も積極的にされていました。
最後のディスカッションも議論はつきませんでしたが、最後まで経口摂取はさせてあげたい、そのために胃瘻などの選択肢をサブとして選ぶ意見が多く出ました。
また、参加者さんの中には実際におじいちゃんが症例と似た境遇に置かれている方もいらっしゃり、身近な問題なのだと皆が実感できるいい機会になったのではないかと思います。
今回セッションに参加してくれた皆さんが将来医療者側として同じようなケースに遭遇した際に、今回感じたことと実際の臨床現場でのギャップも実感しながら試行錯誤し、患者家族と共にベストな道を探っていくための足がかりとなれば幸いです。
参加者さんの今後が非常に楽しみになるセッションとなりました!今後の夏期セミナーも、参加者さんと共に身になるセッションを作っていければと思います!
後期研修医1年目 佐藤瑠美