臨床研究&学会発表振り返り
2018年7月17日テーマ:筑波総合診療グループ
C2の宮崎です。
先日行われた第9回プライマリ・ケア連合学会学術大会で、「一過性全健忘のケースシリーズ研究」についてポスター発表を行いました。
大変貴重な機会であり、皆様と共有させていただきたくブログに投稿いたしました。
〇研究動機
一過性全健忘とは診断基準があり、病歴と身体所見で診断ができ、予後良好と考えられている疾患です。発作以降の短期記憶の障害があり、病院受診した際も、「なんで病院にいるの?」ということを数分間隔で繰り返すような病気です。
一過性全健忘との出会いは2016年の筑波メディカルセンター病院(以下TMC)でした。当初私は初めての遭遇でしたので、頭部CT・MRIで精査しないといけないと考えていました。翌日のカンファレンスでスタッフの先生から一過性全健忘の疾患概念・精査の妥当性に関しては議論の余地があることを知り、非常に驚きました。
同年の秋に、JHospitalist network(以下JHN)で臨床疑問を執筆することとなり、一過性全健忘をテーマに選びました。執筆にあたり、海外の先行研究・レビューなどを読み進めていくうちに、診断基準・アルゴリズムを始め、精査で異常所見が出る可能性の非常に低いことを学びました。
また、日本の現場でのケースシリーズの発表例の少なさに、臨床現場での患者数・精査・入院・医療費に疑問を感じました。
JHN執筆後に、五十野先生、小曽根先生からも臨床研究にすることのご提案をいただいたため、症例集積研究を開始しました。
〇発表までの流れ
①研究プラン・倫理申請編
2016年年末から先行研究を集めて研究プランを立て始め、過去に倫理申請をした先生に申請方法を伺ったり、五十野先生・小曽根先生に伺いながら、初めての倫理申請書の作成を行いました。
2017年4月から所属がTMCになったので、倫理申請を開始し、審査委員会の先生と何度も不足している部分などご指摘を受けながら、7月に無事認可を受けることができました。個人情報の取り扱いをどうするか、2施設での研究でしたので、共同研究者になっていただく方への依頼・調整に最も苦労しました。
②データ収集編
データを業務終了後や休日、当直明け返上でエクセルにまとめていました。SPSSも初めてであり、エクセルでのまとめかたも非常に勉強になりました。当初はSPSSを意識したエクセルのまとめかたをしておらず、指導の先生から「見にくい」という指摘を受けたことがありました。欠損値についても学びました。
③PC学会発表編
いざ研究データをPC学会で発表しようという流れになり、2017年12月から抄録案を作成開始。2018年1月に抄録案提出。採択後、ポスター作成を開始しました。4月の段階でポスターの大筋は完成していましたが、相手にわかりやすく伝えるため、修正に修正を重ねてver 10までになっていました。指導の先生には何度もやり取りをしていましたが、発表前に大学院の「リサーチセミナー予演会」に参加させていただきました。予演会では発表・ポスターのデザインなどを多くの先生方にご指摘いただき、非常に良い経験をしました。レジデントの皆様も予演会を「リサーチセミナーの会」でさせていただけないか、お願いしてみたほうが良いです。建設的なご意見を非常に多くいただけます。
学会当日は多くのご質問をいただき、興味を持っていただいたことが大変ありがたかったです。
〇振り返り
企画段階から1年半は経過していました。研究を通して、研究設計の大変さ、データを収集する大変さ、研究結果をわかりやすくまとめるプレゼンデザインなどなど多くのことが学べました。初めて尽くしの臨床研究でしたが、何とか形にすることができたのは、筑波での熱心に指導してくださった五十野先生、小曽根先生を始め、周り先生方のサポートが充実している筑波だからできたと思います。
Next stepとしては、データをまとめて論文などに投稿することだと思います。すでにご提案はいただいているので、進めていきたいと思います。
〇後期研修の先生方へ
確かに楽ではありませんが、臨床疑問から始まり、研究として形にするのは非常に充実感があります。指導医の先生と相談をしながら、自分のテーマを見つけてみてください。
文責 C2 宮崎 賢治