阪本ら執筆の『ヘルスリテラシー』が「情報管理」ジャーナルで紹介されました。
2016年8月3日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP
総合診療グループ 家庭医療専門医・指導医/地域医療教育学 講師 阪本直人
教育と医療のコラボレーション ~平成28年度教員免許状更新講習
2016年7月17日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
6月25日(土)、茨城県の学校の先生を対象に、平成28年度教員免許状更新講習の選択授業(6時間)を前野貴美先生、横谷省治先生、春田淳志先生、大学院生の松下綾さんと5名で担当しました。
大学の総合診療メンバーで例年授業を行っていますが、今年はテーマを新しくし、学校の先生と我々医療者がどのように連携していけるのかの可能性を探る、という内容となりました。
午前中は「高齢者を理解する」「地域ケア・地域診断」のテーマでインタラクティブに学びを深め、午後は具体的な地域で起きた課題についてどのように対応するか、どのような資源を用いて協働していくかについてワークおよび議論を行いました。
参加者からは、
「自分たちの持っている情報を共有するだけでも、地域の方々に役立つと感じた」
「いろいろ地域資源を上げてみたが、そういえば全然関わったことがない場所・人も出てきて、新鮮だった」
「子供だけでなく、親や地域の方の課題をどのように解決するか、あまり考えてこなかったので、考えるきっかけになったのが良かった」
などの声が上がりました。
更新講習が10年に1回ということと、授業タイトルを見て積極的に申し込んできていただいた方々だったこともあり、地域でいろいろと取り組まれ、経験を積んだ先生方は地域の資源をよく知っておられ、我々が学ばせていただくことも非常に多かったです。
新しいテーマだったため、授業を作り上げていく過程はなかなか大変でしたが、地域全体が良くなるために我々自身に何ができ、周りの方々とどのような形で協働していけばいいのか、これからも考え続けていきたいと思います。
(スタッフ 吉本尚)
【日常の風景シリーズ】 症例ビデオレビュー
2016年7月13日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
筑波大学総合診療科では、基本的な医療面接技術向上を目的として、ビデオレビューを週2回程度行っています。
主に医学生が、筑波大学附属病院の外来で診察した患者さんの許可を得て、診察風景をビデオ収録します。それを指導教員、実習中の学生全員で閲覧します。
例えば、以下のようなやり取りがなされています。
学生A 「意外と緊張して自分のくせが出ている。直したい。」
学生B 「同席している家族が何か言いたそうにしていたが、診察中には気が付かなかった」
学生C 「もう少し情報をまとめて整理する時間が取れれば、自分も患者さんもすっきりしたと思う」
教員「机の上の紹介状とメモ、パソコン、自分の位置関係をみて、面接はやりやすかったかな?」
教員「この瞬間の患者さんの表情は、何を意味していると思う?」
教員「この瞬間に患者さんの緊張感がほぐれて、距離感が近くなったんだけどわかったかな?」
自分の外来診療風景を客観的に見る体験はなかなかできないため、貴重な気づきの機会になっていると思います。
専攻医に対するビデオレビューの機会も徐々に持ち始めているので、そちらも充実していきたいと思います。
(スタッフ 吉本尚)
大学総診ローテーション修了式(その1)
2016年7月8日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
4月~6月に大学総合診療科の研修を修了した、シニアレジデントの劉先生と坂倉先生の修了式が6月30日に行われました。
ローテートのシステムが4月から変わる中、お二人とも非常に熱心に研修に取り組まれていました。
劉先生よりコメントをいただきましたので、掲載いたします。
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大学でのローテートは初めてでしたが、総合診療科では主に外来およびレクチャーで、問診や患者中心の医療、医療倫理を学びました。
外来では1人の患者さんに長く時間をかけられるので、問診を徹底して突き詰めるトレーニングができました。フィードバックも受けることができ次の再診につなげることができました。
レクチャーでは今まで体系的に学ぶことができなかった医療倫理や患者中心の医療を学ぶことができ、大変有意義でした。
3か月間、忙しい日々でしたが良い経験となりました。ありがとうございました。
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指導医 片岡 義裕
大学総診ローテーション修了式(その2)
2016年7月9日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
4月~6月に大学総合診療科の研修を修了した、シニアレジデントの劉先生と坂倉先生の修了式が6月30日に行われました。
ローテートのシステムが4月から変わる中、お二人とも非常に熱心に研修に取り組まれていました。
坂倉先生からコメントをいただきましたので、掲載いたします。
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スタッフの先生方にサポートしていただき、学びの多い3か月となりました。
2つのフィールドを行き来してあまり腰を据えて医局に滞在できなかったにも関わらず、いつも的確なフィードバックや振り返りをしてくださる先生方に囲まれて、幸せな環境だなと毎日感じていました。
もっと先生方とディスカッションしたり、学生さんの指導に加わったり、一つひとつの症例についてさらに文献を調べたりと、深めてみたかったことはたくさんあり心残りもありますが、この3か月で向き合った学びや自分の課題も含めて、引き続き今後の研修で、謙虚に一歩一歩学んでいきたいと思います。
7月からは県外での短期研修となりますが、また先生方と診療させて頂く日を楽しみに、日々の研修に励みます。3か月間本当にありがとうございました。
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指導医 片岡 義裕
吉本先生朝レクチャー 熊本被災地支援報告
2016年7月6日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
吉本先生は6月8日から14日までの1週間、日本プライマリ・ケア連合学会の災害対策チームPCAT(Primary Care for All Team)の一員として、熊本県益城町へ被災地支援に行かれました。
今回のレクチャーでは、支援活動の報告だけでなく、吉本先生が直面した、メディアではあまり取り上げられない問題とその対策も聴くことができ、学ぶことが多くありました。
被災地で支援活動を行う上では、チームにおける自分の立ち位置・医療専門職だけでなく行政との関わり・地元の医療専門職とのバランスなど、戸惑うことも多くあると思います。また、「被災地で活動するチームは日によってメンバーが入れ変わるが、顔も性格も知らないメンバーが合流した直後でも業務を速やかに行わなければならない」という吉本先生のお話からも連携の難しさを感じました。
しかし、保健医療福祉チームのリーダーとして活動された吉本先生は、被災地で今起きている公衆衛生学的な問題の解決だけでなく、今後起こりうる問題に対してもいち早く予防的に対応されていました。これは吉本先生の柔軟な思考はもちろんのこと、医師としての経験・東日本大震災で支援活動をされた経験が活かされていることが伝わってきました。
今回の報告から学んだことを、「なるほど」で終えるのではなく、自分自身の活動にもしっかり活かしていきたいと思います。
益城町を始め、熊本地震で被害に遭われた方々のいち早い復興をお祈りいたします。
地域医療教育学 研究員 後藤亮平
「一歩進んだアルコール問題への対応方法~SBIRT」講演
2016年7月4日テーマ:筑波総合診療グループ, 地域医療教育学講座, 大学
6月28日に、第183回保険・医療・福祉に関する勉強会において、地域医療教育学の吉本尚先生の講演がありました。
今回のテーマは、一歩進んだアルコール問題への対応方法~SBIRT~でした。
SBIRTとは、アルコール問題への対応を効果的に行うための枠組みのことで、具体的にどのように行うのかを含め、一から学ぶよい機会になりました。特にSBIRTのS(スクリーニング)について、CAGEクエスチョンとAUDITなどのツールについて学び、実際に聴衆が二人一組でワークを行いました。
実際にワークしてみると、私の場合、月1回程度の機会飲酒のため、全く問題にならないと思ったのに、意外と点数が高くなることに驚きを感じました。月1回でも飲んでいる量が多ければ、当然危険な飲酒に入ってくることが分かったので、今後気をつけないといけないなと思いました。
私は日頃、薬剤師をしていて、患者様で飲酒する人には、必ず頻度と一回量を聞くようにして薬歴に書き留めています。これからは、今回の講演で学んだことを活かして、スクリーニングをして、短時間の情報提供や患者様の現状の課題に寄り添えるようになっていきたいと思いました。
本日の内容は、日頃の私の業務にすぐ活かせる内容で、実際に体験できてとても有意義な時間を過ごせました。吉本先生のアルコールのレクチャーを聞いたことがない人も、次の機会はぜひ聞いてみてください!
大学院生・薬剤師 佐藤卓也
大西先生の家庭医療レクチャー
2016年6月27日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
先週1週間、アメリカのオレゴン健康科学大学の家庭医療科から、大西恵理子先生が筑波大学に来てくださり、6月20日(月)に毎回恒例の家庭医療レクチャーが行われました。
今回のテーマは、家庭医療の理念を表すACCCCの一つ、Coordination of Careについてでした。日本語だと協調的ケアと訳されます。
他の専門医や他職種との連携についてや慢性疾患管理についてなど、色々な話を聞きました。
慢性疾患管理の例として、定期受診の患者さんが、これまで肺炎球菌ワクチンを打っていなかったり、糖尿病があるのに何か月かHbA1cをチェックしていなかったりすると、電子カルテにアラートのようなものが出る仕組みがあるということでした。
便利な仕組みだな!と感じるとともに、自分の診療を振り返る機会にもなりました。当たり前ですが、慢性疾患の患者さんのマネジメントは家庭医の大切な仕事の一つですね。
大西先生は話が面白くパワフルで、あっという間に時間が過ぎました。今までレクチャーに来たことがない人も、次の機会に是非来てみて下さい。
スタッフ 山本由布
学会発表報告 その3
2016年6月19日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
大学院生(修士2年)の佐藤です。
6月11日、12日の2日間で、東京・浅草にて第7回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が開催され、そこで学会発表(口演)を行いましたのでご報告いたします。
私は薬剤師なのですが、会場にいらっしゃる方々の多くが医師という環境もあり、薬剤師の活動についてどんな反応があるのかとても心配で、非常に緊張して臨みました。
演題は、「ドラッグストアにおける症状を訴える来局者への薬剤師の対応や意識についての実態調査」です。ドラッグストアの薬剤師が、OTC薬を買い求めに来局する人に対して適切な対応をするために、臨床推論をどの程度実践して、自己評価をどう行っているかについて調査したものです。
初めての発表で緊張していましたので、用意した文章を聞き取りやすいように話そうということに注意を払って発表を行いました。会場の方や座長の先生方からは、どんなことを実際行っているのかとご質問をいただき、具体例を少し挙げながら説明させていただいたところ、とても関心を持っていただきました。
今回、発表に至るまで研究室の先生方、大学院の諸先輩方にはとても多くのアドバイスやご指導をいただきました。大変感謝しております。
また、世の中をよくしよう、まれな症例を共有しよう、地域での取り組みを紹介しようという多くの研究者の方の発表を聞くことができて、今後の活動に向けてとても多くの学びがありました。また機会をいただけたら、積極的に発表していきたいと思います。
大学院生 佐藤 卓也
【動画で紹介】総合診療医の専門性や守備範囲、活躍の様子について
2016年6月15日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 筑波メディカルセンター病院, 水戸, 未来医療GP
日本プライマリ・ケア連合学会 制作ビデオが、2016年6月11日に公開されました。
いま日本の医療で期待される専門医のひとつ「総合診療医」を解説、紹介する映像です。
総合診療医の専門性や守備範囲、活躍の様子をご覧ください。
日本専門医機構HP「総合診療専門医概要」より、抜粋・編集
国民に質の高い医療を提供するために、わが国のすべての専門医制度が大幅に変更され、
新しい専門医制度が2015年度医師国家試験合格者から適応されることになりました。
2017年度から日本専門医機構が認定する専門研修プログラムが開始されます。
新制度では「従来の基本診療領域に総合診療専門医を新たに加えることとする」という大きな制度改革がありました。
この総合診療専門医は様々な学会や組織の経験と知を統合しながら、新しい総合診療専門医像を
ある意味オールジャパンで創生していくことを目指し、
本機構内に新たに「総合診療専門医に関する委員会」を立ち上げ、十分かつ慎重に審議して参りました。
そして、総合診療専門医を「主に地域を支える診療所や病院において、他の領域別専門医、一般の医師、
歯科医師、医療や健康に関わるその他の職種などと連携し、
地域の医療、介護、保健など様々な分野でリーダーシップを発揮しつつ、
多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供する医師」と定義し、
この総合診療専門医に求められるコアコンピテンシー(核となる能力)として、
①人間中心の医療・ケア、
②包括的統合アプローチ、
③連携重視のマネジメント、
④地域志向アプローチ、
⑤公益に資する職業規範、
⑥診療の場の多様性、
の6つを提示致しました。
この度ホームページに「総合診療専門医」に関するタブを追加し、
「総合診療専門医」に関する資料(総合診療専門研修プログラム整備基準、
総合診療専門医専門研修カリキュラム(案)、研修手帳(案)、
研修指導医マニュアル(案)など)を掲載する事になりました。
つくば総合診療グループ 指導医 阪本直人
【日常の風景シリーズ】大学院リサーチセミナー
毎週金曜日の14:30~17:00に、地域医療システム研究棟にて、大学院 地域医療教育学分野のリサーチセミナーが行われています。
セミナーでは修士および博士の大学院生が持ち回りで研究の進捗報告を行い、それに対して指導教員の先生方からのコメントを頂き、また大学院生同士のディスカッションも行います。
当教室の大学院生は医師だけでなく、理学療法士や薬剤師、柔道整復師などさまざまなバックグラウンドを持っており、研究テーマも多岐にわたっています。様々な研究について、大学院生同士で意見交換できる機会は、とても貴重な学びの場になっています。
4月には、新入生3名(博士課程2名、修士課程1名)を迎えて、また、新たな視点からのコメントをもらうことができ、ますます、活発なディスカッションになっているように思います。
博士課程4年 河村 由吏可
初期研修医 植松先生が総合診療科ローテーションを修了しました
2016年5月23日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
2016年4月~5月前半を総合診療科で過ごした初期研修医 植松洋先生から、ローテーションを終了した感想をいただきました。
非常に真摯に研修に取り組む姿が印象的で、短い期間の間にどんどん成長される姿に、将来への期待が膨らみました。
植松先生からコメントをいただきましたので、ご紹介します。
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私にとって人生初の研修が、今年4月から総合診療科にてスタートしました。
他大出身の研修医である私にとって慣れないこともたくさんありましたが、そんなことを忘れてしまうくらいスタッフの方々に温かく接していただきました。
また、外来診療にはじまり、総合診療や地域医療にまつわる医療政策に関することまで、幅広い、熱心なご指導をしていただきました。私の総合診療科での研修は一か月半でしたが、不安と期待が入り混じり自身の未熟さへの気づきと新たな発見が連続するとても濃厚なものとなりました。
医師としての第一歩目を総合診療科で過ごせたこと、そこで学んだ多くのことは私の、医師としての人生にとって、かけがえのない財産になったと感じております。
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(スタッフ 片岡 義裕)
【出版記念インタビュー】日本の高価値医療 High Value Care in Japan
2016年5月27日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP
株)尾島医学教育研究所より、2016年5月11日 出版
今回は、日本の高価値医療 High Value Care in Japan (ジェネラリスト教育コンソーシアム) 徳田安春 (著, 編集)の出版を記念して、
片岡より、同僚の阪本直人氏に話を聞いてみました。
どうぞお付き合いください。
【この書籍について】
片岡:
まず、この本について紹介してください。
阪本:
はい。
ジェネラリスト教育コンソーシアムが、世に提言してきたシリーズ本の9巻目になります。
今回は、日本であまり行われていない「高価値医療 High Value Care」を、より積極的に医療現場に取り入れていきましょう。
それと同時に、日本でよく行われている「低価値医療 Low Value Care」を皆で、廃止していきませんかと、提言している内容となっています。
片岡:
世界的に、「医療の質を国民を交えて見直そう」という動きがあるのですか?
阪本:
米国の国民医療費の総額のうち約3分の1は「Low Value Care」であると米国の医療経済学者によって指摘されております。
そこで、米国に続き、カナダや英国、スイスなどでも、低価値なケアをリストアップして、医師と患者の双方に対して、その適応を「再考」するように促す活動が始まっています。
すべての国の医療に、Low Value Careはあると言われております。
片岡:
日本も例外ではないと。
阪本:
そうです。
そこで、徳田安春先生、藤沼康樹先生ら率いるジェネラリスト教育コンソーシアムが中心となり、
日本であまり行われていない「High Value Care」と、日本でよく行われている「Low Value Care」サービスを取り上げ、
そのLow Valueリストのなかで「避けるべき・止めるべき」ケアの優先順位を決定しようと動き出しました。
片岡:
本書の構成は、どのようになっているのですか?
阪本:
前述の「High Value Care」、「Low Value Care」に関して、テーマごとに分担執筆した記事が中心で、
先日、全国から第一線で活躍する医師が集まり、Low Value Care をテーマにディスカッションを行ったのですが、その内容をまとめ、提言した内容も記載されています。
さらに、巻頭特集では、国内外のChoosing Wiselyに関する動向について、海外視察レポートも交えて掲載されており、かなり読み応えのある本になっていると思います。
【阪本担当章、『ヘルスリテラシー向上のための患者教育』について】
片岡:
阪本氏が担当した章、『ヘルスリテラシー向上のための患者教育』について教えてください。
阪本:
これは、主に医師を対象にしたヘルスリテラシーに関する、いわば総説です。
ヘルスリテラシーに関するエビデンスや『ヘルスリテラシーが十分でない』患者さんへのサポート手段の実際を、症例を交え紹介しています。
片岡:
ちなみに、ヘルスリテラシーとは、具体的には、どういうことをいうのですか?
阪本:
そうでした。ヘルスリテラシーの説明が先でしたね。
ヘルスリテラシーとは、
健康情報を獲得し、理解し、評価し、活用するための知識のことで、さらに、意欲や能力も含めます。
これにより、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて、判断したり、意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの1,2)と定義されています。
分かりやすくいうと、中山和弘 先生は、「健康を決める力」と提唱されています。
片岡:
かなり幅広いですね。
知識だけでなく、情報の判断や実際の生活に活かす能力も含めているところが、ポイントなんですね。
なお、ヘルスリテラシー(Health Literacy)が低いと、どのような問題を引き起こすのでしょうか?
阪本:
ヘルスリテラシーが低い集団では、受診や入院回数が増えるなどによる医療リソースの消耗や健康アウトカムの悪さなど、【表1】に示すような悪影響を幅広く生じさせることが分かってきています。
さらに、経済的には、全米で年間11~25兆円相当のダメージを与え、将来は160~360兆円と予測する報告3)もあります。
【表1】
片岡:
かなり広範なダメージを与えうるものなのですね。
国内外で、ヘルスリテラシーに関して、どのような議論が展開されているのですか?
阪本:
世界では、現在、アメリカ、ヨーロッパを中心に、ヘルスリテラシーに関連する研究が盛んに進められています。
日本では、石川ひろの先生、中山和弘先生らが、素晴らしい研究や知見を活発に発表されています。
当講座も一般住民を対象にしたヘルスリテラシー研究を行っております。
アメリカでは、米国健康政策の指針である Healthy People 2010にヘルスリテラシーが盛り込まれ、国をあげた健康づくりの指針に採用され、引き続き、Healthy People 2020にも採用されています。
このことからも分かるように、ヘルスリテラシーは、市民の誰もが持つべきライフスキルの1つでもあり、健康に関する知識や判断力を持つことは、健康維持やリスク回避にも必要ですし、医療を受ける際にも、患者家族が、意思決定にも参加できるようになることで、より納得のいく選択が得られるようになります。
さらに、健康や病気の「原因の原因」ともいえる、人々のライフスタイル、効果的なヘルスサービスの活用、健康を左右する環境といった、健康の社会的決定要因もコントロールできる能力としてのヘルスリテラシーが、重要視されるようになっています。
そのため、国民のヘルスリテラシーを向上させることは、アメリカの国家戦略の1つとして、位置づけられています。
片岡:
そのような背景もあって、「High Value Care」の章にヘルスリテラシーが取り上げられたのですね。
ただ、これまで、日本の医学雑誌や書籍では、ヘルスリテラシーを扱った記事は、見たことがないように思いますが・・・。
阪本:
そうなんです。
医師向けの書籍として、取り上げられたのは、今回が初めてだと思います。
この書籍の制作段階で、徳田先生より、「High Value Care」 を実践してゆく際にも必要不可欠となるヘルスリテラシーについて、大変光栄なことに、私へ執筆依頼があり、担当させていただきました。
片岡:
これだけ重要な概念にも関わらず、日本であまりヘルスリテラシーに関する概念が、まだ広まっていないのは、なぜでしょうか?
阪本:
ヘルスリテラシーに関する日本語で書かれた書籍は、現在のところ、極めて限られているのも、その原因の1つかと思います。
片岡:
ヘルスリテラシーは、全ての医療従事者が理解しておく概念ですよね。
阪本:
ええ。
それどころか、健康全般に関わることですので、医療現場で働く人だけでなく、企業の社員や一般の方にも広く知っていただきたいと思っています。
そこで、別の書籍の話になるのですが、医療従事者、及び医療系学生、さらに、一般の方にもお読みいただける、日本で初めてのヘルスリテラシーの教科書作りにも参加させていただきました。(こちらの記事をご参照下さい)
片岡:
皆でヘルスリテラシーを理解し、互いに助けあって、安心して健康的な生活が送れるようになったり、病気ともうまく付き合ってゆけるようになったりするといいですね。
【読者へのメッセージ】
片岡:
最後に、ヘルスリテラシーに関して、読者へのメッセージなどありましたらお願いします。
阪本:
このヘルスリテラシーという概念そのものは、医療従事者の誰もが、なんとなく持っている概念に近いものですので、理解しやすいと思います。
そもそも、ヘルスリテラシーという言葉を1997年にジャカルタ宣言でWHOが採択し、Don Nutbeam氏が普及させようとした背景には、ヘルスケア・プロフェッショナルの間で、そして、市民との対話を推進させるために、互いに概念を共有しやすくするための用語として、この”ヘルスリテラシー”を用いたのです。
このヘルスリテラシーの章を読まれた医師の皆さんには、まずは、医師の中でヘルスリテラシーという概念を広めていただきたい。
そして、医師だけでなく、多くの医療従事者とも、このヘルスリテラシー概念を広く共有していただければと思っております。
もちろん患者さん、そして、市民の皆さんとも。
医療の現場では、この章を読んでいただき、セルフケアの指導や、慢性疾患に関するセルフケアを支援する際などに、「この患者さんのヘルスリテラシーは、・・・」という発想を多職種で共有し、支援へとつなげてゆくためのきっかけとして活用していただければと思います。
片岡:
分かりました。私も同僚に共有してみたいと思います。
今日は、ありがとうございました。
阪本:
ありがとうございました。
- Sorensen et al. Consortium Health Literacy Project European. Health literacy and public health: A systematic review and integration of definitions and models. BMC Public Health 2012, 12:80
- 中山和弘.基調講演 ヘルスリテラシー=健康を決める力とつながり. KENKO KAIHATSU 2013;18(1).18-49
- Vernon, J. A., Trujillo, A., Rosenbaum, S., & DeBuono, B. (2007). Low health literacy: Implications for national health policy. Washington, DC: Department of Health Policy, School of Public Health and Health Services, The George Washington University
【5/28申し込み開始】 家庭医療学夏季セミナー つくば関連セッションのご案内
2016年5月26日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP
2016年 8月6日(土) ~ 8月8日(月)に湯河原で行われる、
日本プライマリ・ケア連合学会の「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」にて、
筑波大学総診グループの先生方が、全部で3つのセッションを担当されます。
申し込みは5月28日(土)の午前0時(つまり金曜の深夜!)から始まるとのことですが、セミナーの人気が高く、
例年すぐにいっぱいになるとのことですので、申し込みをされる方はお早めにどうぞ!
以下、セミナーのホームページよりセッションの内容を引用します。
どれも非常に興味深そうな内容ですので、ぜひご応募ください!
【医療面接で体験!患者中心の医療の第一歩】
山本 由布 笠間市立病院/筑波大学総合診療グループ
高橋 弘樹 筑波大学総合診療グループ
中野 寛也 筑波大学総合診療グループ
劉 彦伯 筑波大学総合診療グループ
竹内 優都 筑波メディカルセンター病院
任 明夏 筑波メディカルセンター病院
宮崎 賢治 筑波メディカルセンター病院
任 瑞 大和クリニック
「患者中心の医療の方法」とは、家庭医にとって身につけておくべき大事な臨床技法のひとつです。
このセッションでは、その始めの一歩を学びます。この視点を持つと、患者さんと上手くいかないと思った時や、診察後に違和感やもやもやを感じた時の、解決の糸口になるかもしれません。
日々の出来事から診療に至るまでの場面を例に挙げ、できるだけ具体的に、かみ砕いて伝えられればと目下格闘中です。ロールプレイが苦手な方もお待ちしています。
患者中心の医療って何?と思ったあなた、医療現場だけでなく、最近学校や家庭(?)でも人間関係がうまくいかず元気が出ないあなた、参加をお待ちしています。
【診断学~つくば式 鑑別診断入門~】
五十野 博基 筑波大学附属病院 総合診療グループ 水戸協同病院 総合診療科
上田 篤志 筑波大学附属病院 総合診療グループ 水戸協同病院 総合診療科
佐久間 崇文 筑波大学附属病院 総合診療グループ 水戸協同病院 総合診療科
鑑別診断の挙げ方、考え方は経験していけばわかるもの?今年も、筑波大学総合診療グループと水戸協同病院が鑑別診断のノウハウを皆さんに伝授します!
診断学は大学の講義で何となく教わっていたとしても、実際の臨床現場の設定で実践していかなければ身に付きません。そして鑑別診断は、臨床現場では患者さんからの問診や身体所見でリアルタイムに動いていきます。
鑑別診断の考え方がわかれば、きっと明日からの外来実習や外来研修が楽しくなること間違い無しです!
【産業医を体験しよう!~「働く」を考慮した全人的医療を考える~】
田中 完 新日鐵住金株式会社鹿島製鉄所安全環境防災部 安全健康室
友永 泰介 新日鐵住金鹿島製鉄所
井上 大輔 新日鐵住金鹿島製鉄所
阪本 直人 筑波大学地域医療教育学
一日3回処方、3交替勤務者はどう飲むのでしょうか?
職場を変えるよう指示したら、仕事を失う羽目に!?
働くことと治療することが、うまく合わずに悩む患者がいます。
医療職からすれば、治療は命を守ることだから当然最優先と考えますが、患者にとってみれば、働いてお金を稼がないと家族が路頭に迷う、或いは生きがいを失って生きている意味さえない、と考えて働くことを優先する場合があります。
働くことと治療することは両立できるのでしょうか?個人アプローチだけではありません。経済活動という仕組みで動く企業をうまく利用することにより、そこで働く人を健康にする健康経営という概念もあります。
「働く」を考えることで全人的医療を実践し、公衆衛生に貢献する、産業医の魅力を体験しよう!
モーニングレクチャー『理学療法士の魅力』
2016年5月26日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 未来医療GP
本日は、理学療法士であり、我らが地域医療教育学 研究員の後藤先生から、モーニングレクチャーがありました。
医学生、シニアレジデント、大学院生(薬剤師)、スタッフドクターらが参加し、
参加者からは、「理学療法士って、こんなに面白いんだ!」などの感想が聞かれました。
さらに、「こういうの、夏期セミナーや日本プライマリ・ケア連合学会のワークショップとか、やった方がいいよね!」などの
反響があり、今後の展開が楽しみです。
次回も、別のテーマで後藤先生がレクチャ-してくれますので、こちらも楽しみです。
(阪本 直人)
「第三回総合診療・家庭医療セミナーinつくば」に向けて
2016年5月25日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
「第三回総合診療・家庭医療セミナーinつくば」開催に向けた
初回の運営ミーティングが5月23日に行われました。
このセミナーは、全国の医療系学生や初期研修医などを対象に、
つくばの総合診療・家庭医療の魅力を伝えるべく2014年から行っているものです。
(第2回のブログ記事はこちら)
このセミナーでは、筑波大学の学生が主体的に運営にか関わっていることも
特長のひとつです。
今年のセミナー運営に携わる、筑波大学医学類3年の加藤君からメッセージを
いただいたので、ご紹介します。
—————————
5月23日に第1回目のミーティングを開催し、セミナーの日程や
ワークショップの内容、今後の開催に向けた予定などを先生方と話し合いました。
私は昨年、参加者兼当日スタッフとしてセミナーに参加させて頂き、たくさんのこと
を学び、素晴らしい方々とお会いすることができました。
今回も昨年以上のものができるよう、代表として精一杯務めさせていただきます。
頼りない身ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
開催日は2016年11月12日(土)に決まりましたので、
参加したいという方や興味がある方は同日のご予定を空けておいてくださると光栄です。
よろしくお願いいたします。
筑波大学医学群医学類3年
加藤久貴
—————————
【日常の風景】レジデントケースレビュー
2016年5月17日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
総合診療科 選択クリニカルクラークシップ発表会
2016年5月10日テーマ:筑波総合診療グループ, 大学
去る4月27日、28日に大学の臨床講義室前フロアにて医学類6年生の選択クリニカルクラークシップ発表会が行われました。
選択クリニカルクラークシップとは、1年半の実習期間の後半に、希望する2つの診療科で4週ずつ実習を行うもので、総合診療科では、例年20~25名の学生の実習を受け入れています。当科の実習は、はじめの3週は、全国の地域医療現場で実習し、最終週に大学にて振り返りを行い、実習での学びをレポートやポスターを作成します。
http://pcmed-tsukuba.jp/education/area/program.php#anchor04
発表会は学年全106名による、ポスター発表で、まさに学会のポスターセッションです。今年も、総合診療科からは、「離島における医師の研修と生涯教育」「終末期の輸液の方針決定」「え!?こんな状態でも入院しないの?~在宅医療で問われる懐の広さ」など10演題の発表が有り、実習での疑問や学びを深め、学生が本当に生き生きとした表情で自身の言葉で発表してくれました。プレゼン練習を頑張りすぎて声がかれてしまったという方も。
その様子から、一人一人の成長ぶりがうかがわれて、胸が熱くなりました。
同時に、熱心にご指導くださった全国の指導医、スタッフと教育にご協力下さった患者様に心からの感謝の気持ちでいっぱいになりました。
この場をかりて、御礼申し上げます。
今回はじめて4週×2の計8週間実習をされた、栗原史帆さんから、実習及び発表会のコメントをいただきましたので紹介します。
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2ヶ月間、5カ所の診療所で総合診療科の選択CCをさせていただき、それぞれの診療所で教えていただいたこと、感じたことをもとに、「医療を受け、健康で長生きをすることだけで人は幸せになれるのだろうか?」というテーマを設定してポスターを作成しました。
地域医療について何の知識もなかった実習の序盤から、このテーマの設定に至るまでに高屋敷先生に沢山相談にのっていただき、資料の読み方や説明の仕方、ポスターを書く上でのお作法など、本当に沢山のことを教えていただきました。ありがとうございました。
調べた結果、日本人が自身の幸福度を決定する上では健康の他にも周りとの関係性、経済社会状況が影響していることがわかり、目の前の患者さんの疾患だけではなく、患者さんの背景、地域全体を考えることが、患者さんの幸せに繋がるのだと考えました。
総合診療科で実習した同級生の発表を聞いていて、行った診療所、体験した事は違えど、患者さんの背景を大切にすることや、患者さんを中心に考え、他職種で連携を取ることの重要性など、自分が診療所で感じたことを皆も同じように感じていたのだなと感じ、とても嬉しい気持ちになりました。
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文責 スタッフ 高屋敷明由美
総合診療科秘書の皆さまの歓送迎会が行われました
2016年4月29日テーマ:大学
4月25日に、総合診療科秘書の皆様の歓送迎会が行われました。
2年間お世話になりました横谷さん、新しく来られた熊谷さんを囲んで、昼食をいただきながらいろいろなお話をうかがいました。また、横谷さんには、総合診療科一同より感謝状とお花が贈られました。
新しく来られた正木さんは残念ながらご出席できませんでしたが、またの機会にご一緒できればと思います。
様々な業務をてきぱきとこなしていただける秘書の皆さまには、スタッフをはじめレジデントや学生も大変お世話になっています。
総合診療科を支えてくださる秘書の方々に、改めて感謝の気持ちを持ったひとときでした。
(助教 片岡義裕)
2016年4月21日(木)開催!医学生のためのつくば総合診療塾 ~特別編~
2016年4月13日テーマ:筑波総合診療グループ, ステーション, 地域医療教育学講座, 大学, 筑波メディカルセンター病院, 水戸, 未来医療GP
毎回ご好評を頂いております「医学生のためのつくば総合診療塾」。
これまでにも、総合診療の幅広い領域から様々なテーマを取り上げて参りまして、おかげさまで3年目になりました。
そこで今回は、3周年記念特別企画として、新進気鋭の産業医による「医学生のためのつくば総合診療塾」 “ 特別編 ” をご用意いたしました。
今年度も幸先のよいスタートになれば幸いです。
新日鐵住金(株) 鹿島製鐵所から現役産業医をお招きしての大変貴重な機会ですので、ぜひご参加下さい。
テーマ:「『働く』を考えることのできる医療人をめざそう」
皆さん、1日3回処方を、3交替勤務者はどのように飲んでいるか知っていますか?
職場に適応できていない人に、職場を変えるよう主治医が指示したら、職場では大変なことに・・・。
「働く」と治療を両立させるため、産業医は患者さんの職場や会社、ときに家族にまでアプローチし、「働く」をふまえた治療の実践を目指し、日々奮闘しています。
本セミナーでは、産業医が実際の現場で出会うことの多いケースを元にした事例を扱い、ケーススタディ方式で全人的医療の実践について学びます。
産業医が現場で何を考え、職場のリソースをどのように駆使して、全人的医療を実践しているのか?
ワークを通して「働く」ことを考える事のできる医療人を目指しましょう!
【担当講師】 新日鐵住金株式会社 鹿島製鐵所 安全環境防災部安全健康室 田中 完・井上 大輔
/ 総合診療科 阪本 直人
【 日 時 】 平成28年4月21日(木) 18:00~19:45
【 対 象 者 】 医学生全学年~研修医等(筑波大学以外も可)
/参加費無料・申込み先着順(空席がある場合に限り、当日参加可)
【 場 所 】 筑波大学附属病院 地域医療システム研究棟1階 遠隔教育討議室
(PDF裏面に地図を掲載しています)
※ お申込みは、開催日の1週間前までに以下にお知らせください。
筑波大学附属病院 総合診療医養成事業推進支援室
E-mail:mirai.iryo@un.tsukuba.ac.jp 電話:029-853-3339 (担当:早川)
文章:阪本直人