(5) 『子供を持ち変ったこと』
子供を持ち変わったこと
・子供を持ち初めて知ったことや見方の変化は診療にもプラスになっている。
・勤務時間の制限などを複数の医師でカバーする体制の構築も必要。
宮澤
家庭医として仕事をするにあたり、「子供がいなきゃわからない」と言われることに寂しさや反発を長年感じていました。ただ、実際に子供を産むと授乳のことなど全然知らなかったことがたくさんありました。そのあたり、共有して橋渡しになるのではないかなと思います。
任
今だからこそ、悩んでいることや気が付いたことがあります。外来に来る2~3ヶ月の赤ちゃんを抱えたお母さんはこんな思いをしていたのだなと思うと、少し見方が変わりますね。
宮澤
子供が2ヶ月のときに近所のベテランの小児科医の先生のところに予防接種に連れて行ったのですが、健診かと思うぐらいよく診て、凄く優しく教えてくれました。その姿を見て、私も乳児を連れている親にもっと声かけをしていこうかな、と思いました。このように私自身が、子育てを通して、家庭医として勉強させてもらっていますので、いま気づいたことを上手く伝えられたらよいなと思います。
永藤
私も妊娠中に初めて「出産した女性の24時間の生活はこうなるのか」と思いました。必要や興味がないと、発信されていても情報を拾う行動に至らないものですね。家庭医として、自分の妊娠・出産の経験が役に立っていると思いますし、声のかけ方も変わったと感じています。家庭医の先生方向けでも良いかもしれませんが、経験がない人に向けても何か目に見える形になると良いですよね。
永藤
話は変わりますが、先輩女性医師に聞きたいことは何かありますか?私は小1の壁の乗り越え方を聞きたいです。
宮澤
保育園より、小学校に入ってからの方が大変だと聞きますよね。
永藤
学童保育の方が預かってくれる時間は少ないですものね。先輩ママさん達はみなさん研究・教育寄りの方が多いですね。
任
実家に頼れず日勤中心となると働く場所が限られますよね。子供が小さい間は、定期外来を持つのは難しいかもと思っています。(※収録後の今現在は、週1の定期外来を持つことが出来ています。)
宮澤
臨床からあまり離れずにやっていくにはどうしたらいいと思いますか。
大澤
医師夫婦でなんとかカバーできるようにシフトを組んでいる人もいます。例えば、病院勤務医が一人でずっと同じ患者さんを診続けるのが困難なように、グループ診療の様な形式で複数の医師が繋いで診療を継続することは可能なのではないかと思います。これには、医師や患者さんの考え方も変えてゆく必要はあるかとは思いますし、賛否両論もあるかとは思います。しかし、工夫次第では、そういう形での継続外来の形もあるのかなと思っています。従来の形ではなくても、6割くらいであっても臨床ができる環境があるといいですね。
任
今回は育休中の子育て女性医師座談会でしたが、今後は男性医師にもお話を聞けたらと思います。お忙しいところありがとうございました。
皆様からのご意見をお待ちしております。
【編集後記】
任明夏
座談会を行ってから1年、双子の娘は1歳になりました。私は2019年4月から職場に復帰し、2020年2月からは当直も再開する予定です。めまぐるしくも楽しい日々を送っています。座談会当時は医師として再び働けるかが不安でしたが、夫との協力と、職場の皆様の支えで何とかやれています。
阪本直人
子育てと仕事に向き合いながらパートナーと協同する複数のファミリーの様子に触れる機会を得て、私も多くのことを学ばせてもらいました。彼女らの奮闘ぶりに尊敬の念が深まるのと同時に、母として総合診療医として人間性をより深めてゆかれる姿に喜びを感じます。つくば総診は、古くから多様性に富む組織ですが、今回のメンバーのライフイベントの経験は、きっと本組織にも、よい結果をもたらすことでしょう。より柔軟に互いの強みを持ち寄り支え合いながらそれぞれの夢を実現してゆく組織として、今後も成長してゆければと思っています。
制作:筑波大学総合診療グループ
監修 :阪本直人
編集長 :任明夏