(2) 『キャリアへの考え方』
キャリアについて
・将来設計も大切だが、“来た球を打つ”ようなキャリアが向いている人もいる。
・当科は子育ての先輩が多く安心して出産できた。
宮澤
自分たち自身のキャリアの話をしますか。子供を持つ前に想像していたものと、いざ子供を持ってみて、何か違いがあるとか、今後どうやっていきたいかとか。
任
私はまだ専門医を取っていない状態での妊娠、出産です。私がいまのんびりしていられるのは救急など専門医習得に必須の研修内容が全て終わっていたからなのですが、ここは医師3年目から考えて動かなければいけなかったなと妊娠してから思いました。また、つわりは文字通り動けなくなったので、想定外という思いは強かったですね。
永藤
私は後期研修中に妊娠、出産が経験できたら良いと思っていました。一人目を出産して、また違う人生のスタートラインに立ったと感じています。今回の妊娠、出産は自分のキャリアより家族を優先しての結果ですが、思わぬ双子であったこともあり、キャリアはこれからまた考え直します。スタッフになり、働く場所も固定され、自分の働き方がある程度見えていたので、少し安心して妊娠・出産に臨めたなと思っています。
宮澤
5年後、10年後のキャリアプランを決めてしまうと、妊娠・出産がどこに入ってくるかわからないので、子供の存在がハードルのようになってしまうと悲しいですね。目標を言語化してそこに向かってやっていくことが凄くやりがいになる人はよいのですが、私はそうではないです。あえて決めないで、その時の自分の状況に合わせてやっていく方が、やりやすい人もいると思います。総合診療医の診療では“来た球を打つ”と言いますが、キャリアも“来た球を打つ”ので良いのではと。私自身は暫く子供ができず、その点で思うようにいきませんでしたが、その間に身軽でいたからこそ、北茨城で家庭医療センターの立ち上げをやりセンター長をする機会が頂けました。最近は、キャリアディベロップメントが大事という流れもありますが、あまり縛られ過ぎない方が良いのではと思っています。
任
若手女性医師の話を聞くと、やはりキャリアの見通しが立たないことが不安という声は聞きます。私は、総合診療科は妊娠・出産して働かれている先生がたくさんいたことと、様々なキャリアへの柔軟性があり、育児との両立ができそうだなと考えていました。
永藤
やはり、同じ科の中に先輩ママがいると、子供を育てながらでも働けること、キャリアは緩やかかもしれないが積めるんだいう確信が持てたので、安心して臨めたかなとは思います。
宮澤
(当科は)お子さんが二人、三人といる家庭も多く、大丈夫なんだなと思えます。
大澤
私は後期研修の初めは、子供のことは考えていなくて、後期研修3~4年目くらいになってから考え始めました。キャリアに関して不安はありましたが、やはり前例があるというか、経験のある先輩方が周りにいるということはすごく良いことですね。
任
私はグループに加わる前、前野先生と面談した際に妊娠・出産の話をしました。その時は、「授かりものだから、妊娠したときは産むとき。仕事は何とかする」と言っていただきありがたかったです。
永藤
自科の研修施設にいるときは融通も利きますが、他科を回っている時に配慮していただくのが申し訳なく思いました。私は第一子妊娠中に緩和ケア科を研修していたので、オンコールも当直も免除していただきましたが、緩和の研修としてはレベルが下がってしまうし、(体調のこともあり)当直も入ることができず先方の病院にご迷惑をかけて、心苦しかったです。
宮澤
当直については、妊婦は希望すれば当直免除するという労働基準などがありますし、勤務ができないことはありますよね。ただそういう基準があっても休む際に、自分自身が心苦しいことはあるでしょうね。
私の勤務地は2つの診療所全体で常勤3人換算でしたので、診療所に私一人しかいない日がありました。たまたま、つわりがひどくなくて、寝込むことや休むことなく、仕事ができていたから成立しましたけれど。そういう意味で、ある程度人数がいる職場のほうが融通は利くのかなと思うときはあります。周囲に負担はかけてはしまいますが。
永藤
私も昨年は勤務先に私一人しかいなかったので、出産希望があったわけではないですが、万が一にも妊娠すると大変なことになってしまうな……と思っていました。
任
私は不妊治療をしていたのですが、それまでの勤務環境だとなかなか治療が進みませんでした。自分の力ではどうしようもないなと思い、前野先生に相談したところ、いろいろ配慮をして頂けて嬉しかったです。
永藤
私は特に相談はしていませんでしたが、職場などを事前に相談出来る環境はありがたいですよね。
医師でも子育てはわからないことだらけ……。と、しばし雑談