ママ総合診療医座談会~初めての妊娠・出産~

コラム

【前野先生に、科としての方針とビジョンをインタビューしました】

私は個人のライフイベントや人生計画は最も優先されるべきだと思っています。ですので、職場環境に遠慮して、自分の人生の計画が影響を受けることがないようにして欲しいと思っています。これは、妊娠・出産だけでなく、誰でも病気で倒れてしまうこともあれば、介護をする立場になることもあるでしょう。そのような大きなライフイベントに遭遇した際には、そのときに皆で一緒に考え、支援してゆきたいと思っています。

実際これまでも、不妊治療をしているという人への配置に配慮をしたこともありましたし、不測の出来事や突発的な事態が発生した際には、その都度対応してきました。診療をめぐる環境は厳しいのは事実ですが、周囲との連携で診療体制の融通をきかせて、何とか対応していきたいと思っています。

ですから私は、レジデントから「いつ産んだらいいですか」と聞かれたときはいつも「産みたいときに産んでいい」と答えています。でも、よく考えてみれば、私が、個人や家族のライフプランに干渉するのはおかしいわけですから、本来は「産んでいい」という言葉を使うこと自体が適切ではないのかもしれませんね(笑)それと同時に、出産を控えている女性医師には、育児も仕事も両方ともパーフェクトにしようと思わないこと、そして、仕事のアクティビティ、特に急性期医療は、できる限りゼロの期間を短くして欲しいということも話しています。一度、仕事をゼロにしてしまうと戻るハードルがどんどん高くなってしまいますので、例えば、月1回、週末の日直に入るなど、細々とでもいいので続けていた方が、後で復帰は楽ですし、パートナーにも、それくらいはできるように支援してもらいたいですね。

そして、今は若い世代の人が多いですが、将来子育てが一段落したら、後輩たちを支援する側にもまわって欲しいと思っています。臨床面ではこれまでにも、教わる側から教える側に変化してゆく関係性ができているように、支えてもらう側から支える側になりながら、いい関係性を築ければ、今後、皆さんが後輩のロールモデルにもなってゆくのではないかと思っています。

※当科の妊娠・出産に関するビジョンについて、後日インタビューしたものを掲載しています。

(3) 『育児・家事分担について』

育児にもエビデンス

・育児の分野にも正しい情報が少ないことを実感。その経験を診療に役立てたい。

情報を得るという点では、ネットがある時代に生まれて良かったと思っています。ただ、手に入る情報は玉石混交ですよね。私は切迫早産で入院してから産後2週間までは神経質に色々なことを調べていましたが、エビデンスがある情報は少ないと気がついてから、やめました。誰しも、特に最初の子供だと心配になると思います。

永藤

産後は乳腺炎予防のために甘いものを食べてはいけないということも、何のエビデンスもない提言ですよね。昔からの言い伝えと思われる助言・情報が多いように感じました。その分野のヘルスリテラシーが大事だなと。医師だから科学的根拠があるかどうかはわかりますが、一般の人にはわからないと思います。

宮澤

私は母乳が足りなくてほぼミルクです。巷に溢れる母乳情報に関する科学的根拠について検討したり、エビデンスに基づいた情報源を紹介してくれている女性医師がいらして(該当Webサイト※1)、このページは一般の方にも参考になると思います。ここで紹介されている日本ラクテーション・コンサルタント協会が声明を出しているのはエビデンスに基づいた情報でした。母乳育児の方が、乳幼児突然死症候群(SIDS)が少ないというのはエビデンスがあるわけですよね。同サイトに資料ダウンロード※2というページがあり、有益な情報がまとまっています。

※1.BuzzFeed News「その母乳情報、大丈夫ですか?ママサイトにはご用心」2017/09/29 6:01
(https://www.buzzfeed.com/jp/yasumimorito/mamasite)

※2.日本ラクテーション・コンサルタント協会 公式ホームページより『資料ダウンロード』(https://jalc-net.jp/dl.html)

(上記いずれも閲覧日:2019年7月22日)

SIDSについてエビデンス談義に花が咲く・・・。

家事分担について

・ときには外注も活用し、家事を夫婦だけで抱え過ぎないようにする。

永藤

育児家事分担は、どうされていますか?我が家は長男がいるので、保育園送迎、長男の相手をしながらの料理作り、長男・双子のお風呂、21時~22時に寝かしつけ、4時、5時に双子の授乳を契機に起きて、そこから2時間位が自分の時間で部屋の片付けや朝の準備をしています。夫は当直やオンコールなどが週1-2回のペースで入るのですが、家にいる時は夫が子供のお風呂や長男の遊び相手などを担当しています。

宮澤

我が家は私が元々家事は得意ではないので、元々2週に1回家事代行を依頼していました。私が妊娠してからは、毎週に増やしています。私自身は産んで1ヶ月半過ぎてから、多少家事をやるようになってきたくらいです。

大澤

家事代行は何を依頼されているのですか?

宮澤

水回りの掃除や掃除機がけ、洗濯、余った時間があればプラスαで、アイロンがけを依頼しています。時間は2時間ですね。

私も、家事代行に水回りの清掃を依頼しています。水回りはやってもらうとすごく綺麗になりますよ。掃除しなきゃという強迫観念から解き放たれて、だいぶ楽です。

永藤

人を部屋に招ける状態にしないといけないのでは、と思ってしまうのですが、どうなんでしょう?

宮澤

私は、基本の片付けなどから一緒にお願いしています。前野家ではお子さんが小さい頃、家政婦さんに料理の下ごしらえなどお願いする時間で、お子さんと遊ぶようにしたと貴美先生が共働き夫婦のインタビューで答えていたのを読んだことがあります。(※前野家:前野哲博教授・貴美先生ご夫妻とお子さん3人)

永藤

大澤先生のところは、旦那さんが家事をやってくれるのですか?

大澤

私も、夫も家事があまり好きではなく、子供が産まれたからやらなきゃいけないなとなっています。育休を取ったことで自分の家事スキルが上がったこともあり、そのスキルを夫に伝えて、「これからはやろうね」という段階です。たまに夫の実家からお義母さんが来てくれて少し手伝ってくれたりします。

全員

すごーい!

宮澤

そういった関係性も良いですね。

あと使える家電は使っています。ロボット掃除機を使い、全自動洗濯乾燥機を使い食洗機を使っています。

食洗機いいですよ、必須ですよ!と食洗機トークで盛り上がる……。

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