総合診療医にとって
重要なこと

「初めて」を恐れず、
真正面から向き合ってきた

横谷 省治

1993年筑波大学卒。漠然と小児科医を考えていた学生時代に、ある家庭医から「家庭医は患者か自分どちらか死ぬまで関係が続く」と言われ家庭医を志す。川崎医科大学で家庭医の研修、三重大学で家庭医療学教室創設期の10年を経て2010年母校に戻る。現在、北茨城市民病院附属家庭医療センターと大学で診療、教育、研究、地域多職種連携活動に従事。日本プライマリ・ケア連合学会では理事として専門医制度、メンタルヘルス教育などを担当。

総合診療に携わって
良かったと思う瞬間

患者さんから「先生に会うとほっとする」、「元気が出る」、あるいは「何でも相談できる」と言われたときが一番ですね。ヘルスケアの提供のあり方として、患者中心のメディカルホームというアメリカ発のモデルがありますが、帰ってくるとほっとするのがホームだと思うのです。ですので、そう言われると役割を果たせているかなと。地域の皆さんが健康のことで困ったとき、または困る前に、「あそこに行ってみよう」と思って貰えたらうれしいです。

これまで乗り越えて
きたこと

どんな相談にも応じるのが総合診療医/家庭医ですが、あらゆる領域の研修ができるわけではありません。どれだけ経験を積んでも「初めて」はなくなりません。特に若いうちは未経験のことに携わる不安は大きいです。それでも避けずに真正面から向き合うことを心がけてきました。もちろん独りですべてを担うということではなく、多くの専門職とつながりながらです。乗り越えたというほどのことではありませんが、大切にしてきた姿勢です。

今後やっていきたい
こと

対話法の教育に興味があります。専門医教育には、親方の仕事を見て弟子が技能を学んでいくような徒弟制的構造が組み込まれています。手技の習得ではこれが上手くいっていますが、患者さんとの対話においては、年次が進むにつれ高度なものが求められるにもかかわらず、指導医を見て学ぶ機会はむしろ減っていきます。患者さんを癒やす対話の技能を築く段階で、指導医と専攻医はどのような関わり方がよいか考えていきたいと思います。