総合診療が
か?
医療の急速な進歩は、私たちに大きな恩恵をもたらしましたが、一方で医療の専門細分化が進みました。その結果、健康上の困りごとに対して「何科にかかっていいのかわからない」「○○科だと思って受診したら、専門外といわれて診てもらえなかった」「複数の体の不調をまとめて相談したいのに、その医師の専門領域しか話を聞いてもらえない」といったケースも数多くみられるようになりました。また、生活習慣病が増え、病気になる前からの予防・健康増進の重要性がクローズアップされていますが、「病気にならないと診てもらえない」という状況も生じています。このような状況において、健康問題をトータルでとらえ、なんでも幅広く対応する総合診療医の存在は、地域医療の担い手として、社会的にも大きな注目を集めています。
日本社会での
少子高齢化が進むなか、複数の健康問題を抱える患者が増えています。また、病院の集約化が進み、医療へのアクセスの担保が大きな問題となっています。このような現状において、地域住民が安心して医療を受けるためには、保健・医療・福祉に関わる多くの職種と連携して、住み慣れた地域で家族と暮らしながら医療サービスを受けられる体制の構築が求められています。そのために、もっとも活躍が期待されているのが総合診療医です。診療の場という観点からみても、臓器専門医が専門性を発揮できる場所が主に大病院であるのに対して、総合診療医がもっとも得意とするところは地域医療の現場であり、今後総合診療医が増えることは、医師の地域偏在・診療科偏在の改善という意味でも、社会から大きな期待が寄せられています。
総合診療の
とは?
総合診療医は、健康に関する困りごとについて何でも気軽に相談にのり、健康な時も病気の時も、人びとの暮らしに寄り添い、家族やコミュニティも含めて最適な医療・ケアを提供する医師です。総合診療医として、健康について「どんなことでも相談にのれる」存在であることは、住民の大きな安心につながる、大変やりがいのある仕事です。家族ぐるみで良好な関係を構築して「先生に相談してよかった」「全部診てもらえて安心した」という感謝の言葉をいただくことも多いですし、コミュニティの健康に深くかかわることで、地域全体をまるごと診ているという感覚を持つこともできます。このような活動を通して、住民の健康と安心に貢献していると実感できることが、総合診療の大きな魅力です。
未来の
これからの日本は、さらに少子高齢化、人口減少が進んでいきます。医療機能の集約化や医師偏在などの問題もあり、総合診療の重要性がますます高まっていくことは確実です。実際、高齢者人口が増えて医療ニーズがピークを迎える2040年を見据えて厚生労働省が提唱している「三位一体の改革」でも、「総合的な診療能力を有する医師の確保等のプライマリ・ケアへの対応」がテーマの一つに掲げられています。医師養成に関しても、令和4年度版医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいて、医師として求められる基本的な資質・能力の一つとして「総合的に患者・生活者をみる姿勢」が掲げられるなど、その教育が強化されつつありますし、総合診療専門医養成に対する支援は全国各地で行われています。これからもその追い風は強まっていくことでしょう。